e避難指示解除 本格復興への新たな一歩に

  • 2016.05.31
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年5月31日(火)付



東京電力福島第1原発事故で福島県南相馬市など3市村に出されていた避難指示が、6月から7月にかけ、相次ぎ解除されることになった。

事故から5年2カ月余り。既に避難先で新たな生活を始めている避難者もいる。放射線量への不安などから帰還をためらっている人も少なくない。当該地域の住民にとって、「解除」への思いは複雑で、手放しでは喜べないというのが本音だろう。

だがそれでも、解除を機に、原発事故で止まっていた"故郷の時間"が動き出すことだけは確かだ。

「解除はゴールでなくスタート」(高木陽介経産副大臣・原子力災害現地対策本部長=公明党)との認識の下、国は県や地元自治体と一丸となって、本格復興に向けた新たな一歩を踏み出してほしい。

今回、解除が決まったのは、対象人口が1万人を超える南相馬市のほか、1350人対象の葛尾村と51人対象の川内村。いずれも避難指示解除準備ないし居住制限区域で、葛尾村は6月12日に、川内村は同14日に、南相馬市は7月12日にそれぞれ解除される。

避難指示が解かれるのを前に、政府に改めて確認しておきたいのは、「解除イコール支援の後退」であっては断じてならないという一点だ。

なるほど、指示が解除される3市村の対象区域は、住宅まわりの除染が一巡し、放射線量の低減が確認されている。特別養護老人ホームや新しい商業施設のオープン(川内村)、村役場の全面再開(葛尾村)など生活関連のインフラやサービス、行政機能も確実に整いつつある。

だが、子育て世代を中心に放射線量に対する不安はなお根強く、住まいや仕事、教育など帰還後の生活の見通しが立たない住民も少なくない。

「急激な人口減少と超高齢化」(遠藤雄幸・川内村長)、「生業存立を阻む風評被害」(松本允秀・葛尾村長)といった高く厚い壁も立ちはだかっている。"失われた故郷の5年"を取り戻す作業は、むしろこれからが正念場と言っていいだろう。

「真の復興への闘いは解除後にこそあり」(高木副大臣)との覚悟で、国はこれまで以上に住民に寄り添い、一層の支援強化を図る必要がある。

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