e土曜特集 「さあ、公明党の出番」

  • 2016.05.30
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年5月28日(土)付



夏の参院選を控え、先行き不透明な経済など政治課題が山積する今こそ、安定した政治のカジ取りが欠かせない。日本大学大学院の岩渕美克教授、一橋大学大学院の中北浩爾教授に、公明党が連立政権に参画していることの意義や党への期待などを語ってもらった。


日本大学大学院 岩渕 美克 教授


政策に弱者対策を加味


―今の日本の政治状況をどう評価するか。


岩渕美克教授 この3年余りで自公政権が安定したことが日本の政治全体にとっては最良だろう。

この間、賛否両論は別にしても、外交・防衛問題で老若男女を巻き込んだ議論ができたことは非常に良かった。あそこまで国民が一つの政治テーマについて考えた機会はしばらくなかったと思う。政権が安定していなければ、あれほどの論議はできなかった。その中で、ややもすれば右寄りに走る自民党の抑えとなったのが公明党だ。

経済政策については、金融緩和によって円高は是正され、日経平均株価も上昇するなど一定の効果は見せた。その半面、企業の投資は伸びず、家計の消費も伸び悩んでいる。この点では道半ばという見方をせざるを得ない。

安倍晋三首相は、基本的に新自由主義の立場なので、弱者に厳しい政策となる可能性が高い。こうした政策に傾きかねない状況の中で懸念されるのは格差の拡大だが、連立パートナーである公明党の人間主義の理念が歯止めをかけているとみている。


公明主張の給付型奨学金 未来につながる投資

―参院選で問われるべき政策は。


岩渕 東日本大震災や熊本地震の被災地復興も含めた経済政策と、年々膨れ上がる国の借金をどうするか。あとは教育の問題だろう。教育政策は国の根幹に関わる。その重要性を理解してほしい。

今の日本には、学ぶ意欲と能力があっても、経済的な理由で学業を諦める若者が数多く存在する。だからこそ、公明党が強く主張している返済不要の給付型奨学金は実現してもらいたい。人への投資は、必ず未来への投資となる。教育政策への予算は惜しむべきではない。

―若い人の声を政治に届けるための「18歳選挙権」が始まる。


岩渕 間違いなく一つのトピック(話題)だ。若者が政治を身近に感じられれば関心も高まるし、投票率も上がる。公明党の青年委員会が行った政策アンケート「VOICE ACTION(ボイス・アクション)」は、若者が政治について考える一つのきっかけになるだろう。こうした取り組みは定期的に実施してほしい。

一方で、このところ資質を欠いた印象を受ける政治家が目立つ。初めて選挙に行く若者が政治に失望するようなことがないよう、政治家は襟を正してほしい。そこで重要になるのが主権者教育だ。政治家を選ぶ責任は国民にあるが、残念ながら日本では政治を監視し、本当に国民のために働く政治家を見極める教育がほとんど行われてこなかった。主権者教育が広がれば、政治家の質は必然的に上がり、日本の民主主義のレベルが高まるはずだ。

―公明党に期待することは。


岩渕 安倍首相のタカ派的なイメージを和らげる抑制効果を連立政権の中で効かせていることが、公明党の最大の貢献だと思う。国民は与党としての公明党に対し、政策に弱者対策を加味することを期待している。

例えば、公明党が主張するフリースクールや夜間中学など児童・生徒の学校外における多様な学びの支援や、農業と福祉が連携する農福連携などは、まさに公明党ならではの視点と評価する。

公明党が自民党に迎合しているとの批判があるが、選挙制度改革のような重要課題ですら対応が分かれたのだから、その批判は当たらない。こうした、是々非々の姿勢をもっと鮮明にしてもよいのではないか。

私は、与党か野党連合かという"疑似二大政党制"の構図を無理につくって参院選の焦点とすることは、今までの日本の政治文化と照らし合わせると必ずしも良いとは思わない。きちんと各党が政策で正面から争うのが正しい選挙戦だし、さまざまな選択の幅を保障しないと社会は分断される。公明党には与野党の政策をつなぐ役割を任せたい。


いわぶち・よしかづ )
1958年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程単位取得満期退学。専門は政治コミュニケーション、世論、選挙キャンペーン。日本選挙学会前理事長。編著に『政治社会学』(一藝社)。


一橋大学大学院 中北 浩爾 教授


中道主義が政治に安定


―現在の政治状況をどう見るか。


中北浩爾教授 政治が二極化し、与野党の対決色が強まっている。例えば、安全保障法制をめぐる対立がそうだ。また、民主、自民、公明の3党が協調し、国民的な合意をつくろうとした「社会保障と税の一体改革」も現在、脇に追いやられてしまっている。

こうした対立構造は、1990年代の政治改革で生まれたものだ。小選挙区制の導入によって与野党の競争が激化した。また、癒着や利益誘導政治を排除しようとした半面、政党と国民とのパイプが断ち切られるという弊害も生じている。

対決政治は本来、国民にとって望ましくはない。そこで、公明党に期待していることが二つある。一つは政党が対立する中で中道的なポジションを占め、国民の常識に基づいた、穏健で中長期的な合意をつくる求心的な役割。もう一つが、政党政治において社会とのパイプ役として機能することだ。


建設的な合意形成図る勢力

―なぜ公明党なのか。


中北 公明党は中道主義を掲げるとともに、党員や地方議員がしっかりしており、創価学会という支持団体がある。

これまでもPKO(国連平和維持活動)協力法の制定や「社会保障と税の一体改革」などで、公明党は各党の合意形成に尽力し、安全保障法制でも一定の役割を果たした。社会とのパイプという点では軽減税率も、国民の要望に寄り添おうとしたものだといえる。

社会に確固たる基盤を持つ中道的な勢力が政治の中心を担う。これこそ、本当に安定的な政党政治だ。まさに公明党的なものではないか。公明党は「大衆とともに」との立党精神と中道主義をさらに追究して、建設的な合意形成を図る勢力であるという自己認識をもっと高めるべきだ。

―今回の参院選の焦点は。


中北 参院選は本来、政権選択の選挙ではない。また、政治状況を見ても安倍政権が存続する、しないということが焦点だとは考えにくい。

幾つかある争点の一つに憲法が挙げられている。安倍晋三首相にとって、憲法改正は第1次政権で積み残した課題であり、自民党も憲法改正草案をまとめているが、その一方で憲法改正に反対する勢力もある。

公明党は、現行憲法を維持した上で新たな条文を加える「加憲」を提唱している。この路線は常識的であり、おそらく国民多数の声だ。ぜひ公明党には、自らの憲法路線を明確に打ち出してほしい。「改憲か護憲か」という二極化した対立は望ましい構図ではない。それを変えられるのは公明党しかいない。

―今回の選挙では野党が1人区で候補を一本化し、選挙協力を進めている。


中北 1人区は二極化を促進する制度なので、現在の選挙制度からいえば仕方ない面がある。衆院選挙制度も含めて、現行のままでいいのかどうか、抜本改革も視野に入れて考えるべきだろう。

その上で、現在の野党が政権を担える状況にあるとは正直思えない。民進党は、民主党政権時代の総括ができているかというと、残念ながら否だ。だから、なかなか立ち直りができない。他方、共産党の選挙共闘は戦術的なものでしかなく、組織体質も基本路線も変わっていない。

―公明党は今回、定数が複数の選挙区で積極的に候補を擁立している。


中北 その点は注目している。参院選は複数区や比例区など、二極化にならないような要素がある。そこで公明党が自己主張して、自分らしさを出していくことは非常に重要だ。

近年、公明党は国政で世代交代が進んでいるが、若い世代は皆、高学歴で優秀だ。一方で苦労しながら育ったなど、公明党らしいストーリーもある。今回もいい候補を選んでおり、党としての力を感じる。その上で、庶民を基盤としていることと中道主義は公明党の原点だ。若い世代がこの原点をしっかりと受け継ぎ、さらに公明党らしさを発揮することを期待している。


なかきた・こうじ )1968年、三重県生まれ。東京大学大学院博士課程中退。立教大学教授などを経て現職。専門は日本政治外交史、現代日本政治論。著書に『自民党政治の変容』(NHK出版)など。

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