e文化財への投資 魅力を伝える多言語化が必要

  • 2016.04.28
  • 情勢/国際

公明新聞:2016年4月28日(木)付



2015年度の訪日客数が2000万人を突破した。繰り返し日本を訪れるリピーターも増えており、旅行者の間では、買い物だけでなく日本の文化や伝統を「体験」する機会の人気が高まっている。

こうした訪日客の需要に応えるため、政府は26日、文化財を活用した地域活性化事業への補助金を増やす方針を明らかにした。文化財の案内板やホームページの多言語化、歴史的建造物を宿泊施設として活用することなどが想定されている。

国内観光需要の拡大は経済成長の推進力になり、地方創生にも役立つ。文化財を所有する自治体や運営団体による、創意を生かした積極的な取り組みを期待したい。

総務省と観光庁が今年1月に発表した調査によれば、訪日客の多くが、観光地でのインターネット環境や多言語化されていない案内板に不満を感じているという。

文化財を楽しむには一定の知識が必要だ。例えば海外で人気が高い浮世絵は、絵として魅力があるのは当然だが、愛好者の中には鎖国して独自の発展を遂げた当時の江戸文化に関心を寄せる人もいる。

しかし、絵を展示する美術館では、景観との兼ね合いもあり、多言語化された案内板を設置できる数には限りがある。寺社仏閣も同様だ。外国人旅行者の目線に立って、適切な情報発信の工夫を続けることが欠かせない。

自治体や事業者には、地域の魅力を高め、文化財への投資で呼び込んだ訪日客の満足度を上げていく努力が求められる。例えば、文化財がひしめく京都のあるタクシー会社は、運転手の英語力強化や、専門家と協力して着物の着付け体験ができるサービスを行っている。英語タクシーの料金は安くないが、東京五輪の招致決定後、利用者が殺到したという。

公明党は26日に政府に申し入れた1億総活躍社会の実現に向けた提言の中で、地域の文化財を活用した観光拠点200カ所の整備を訴えた。その際、多言語化した解説の発信や、適切な修理・美装化など戦略的な投資を進めるよう訴えている。全国各地に眠る貴重な遺産の魅力を高め、その恩恵を地域に還元させる取り組みを進めたい。

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