e地理的表示保護制度 "攻めの農業"の武器。普及急げ

  • 2016.04.19
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年4月19日(火)付



兵庫県の「神戸ビーフ」や北海道の「夕張メロン」など、原産地の気候や風土を活用した特別な製法で生み出される農林水産物や食品がある。

こうした原産地と深く結び付いた産品の名称を、知的財産として国が登録し、守る「地理的表示保護制度(GI)」が"攻めの農業"に打って出る際の大きな武器になると注目されている。

現在、GIに登録されているのは前述の2産品に加え、但馬牛、八女伝統本玉露など12産品。さらに、約60産品が申請中である。農林水産省は今月、2020年までに各都道府県で1産品以上の登録をめざす目標を明らかにした。

GI登録品の産地名を不正に使用した偽物が出回った場合、政府が積極的に取り締まり、不正使用をやめるよう命じても従わなければ、偽物を扱う者に懲役や罰金が科される。生産者が血のにじむような努力で育てた産品を、国が直接守ることは重要である。公明党も、GIの普及を政府に訴えている。

GIは、チーズやハム、ワインなどに原産地名を冠した有名な産品を生産している欧州連合(EU)加盟国をはじめ、中国や韓国など100カ国以上で運用されている国際的に認められた制度である。日本での導入は昨年6月で、まだスタートしたばかりだ。

問題は、日本のGI登録品が輸出された場合、海外でも保護されるための仕組みづくりが進んでいないことである。国内の生産者が輸出する場合、輸出先の外国政府に個別に申請し、保護を求めなければならず、手続き面の負担が大きいのが実情だ。

環太平洋連携協定(TPP)では、参加12カ国間で結ばれる国際協定を通じて、GI登録品を相互に保護できるルールを定めている。TPPの発効に伴い、日本の生産者が外国政府に直接申請しなくてもGI登録品が保護されるようになれば、日本の農産品などの輸出拡大の促進につながることが期待できる。

しかし日本では、GIについて知る人は多くない。生産者に伝え、制度の活用を促すと同時に、消費者にもGI登録品を知らせなければ、ブランド価値の向上にはつながらない。まずはGIの国内での認知度を高める必要がある。

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