e保管だけでなく展示にも力点を

  • 2016.04.11
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年4月9日(土)付



新たな国立公文書館



重要な歴史文書を保管する国立公文書館の機能・体制の拡充が今、求められている。

内閣府の有識者会議が、新たな国立公文書館の基本構想をまとめた。これを受け、衆院議院運営委員会の小委員会は近く、建設予定地選定に向けた協議を始める。ぜひ今国会で結論を得てもらいたい。

2014年、昭和天皇の生涯を記した「実録」が宮内庁によって編さんされた。現在書籍として刊行中だが、この実録にも公文書館に所蔵された文書が反映されている。

日本は今、急速なグローバル化や類例のない少子高齢化などの大きな時代の波に直面している。こうした中で将来の針路を決めるヒントは、未来の"鏡"とされる歴史に負うところが大きいだろう。

その意味で、憲法や終戦詔勅の原本などを保管し、日本の政策決定過程や歴史的変遷を記録した公文書の価値は高まっており、それを保存する体制を強化していくことは重要である。

現在の公文書館は東京都千代田区の本館と茨城県つくば市の分館がある。両館の収容量は14年度までに8割に達し、このままでは19年度までに満杯になる見込みで、収容スペースの確保が急がれる。

このため、衆院議運委の小委員会は新たな候補地として国会近隣の2カ所を挙げている。基本構想は新施設の規模を「現在の本館の数倍、4~5万平方メートル程度の確保が望ましい」とした。収容の限界と建設期間を見据え、選定を急ぐべきだ。

欧米諸国に比べ、日本はハード面だけでなく、展示をはじめとするソフト面でも不十分な点が多い。展示では空調環境が国際水準に達せず、憲法原文もレプリカ展示にとどまる。他機関との連携も含め、デジタル技術を生かした環境づくりも課題だろう。

基本構想は「魅力ある展示手法の開拓」も指摘している。今後は国民の関心が高いテーマを扱うなど「見せる展示」に力点を置くことも検討してはどうか。特に歴史的文書の原文展示によって、"生の歴史"に触れられる機会を増やしてほしい。

また、国会近隣という立地条件を生かし、国会見学に訪れる人々が来館できる機会もつくってはどうか。

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