e新しい行政不服審査 使いやすく公正な制度へ前進

  • 2016.04.04
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年4月4日(月)付



健康保険や年金など社会保険の分野、生活保護などの福祉関係、また税法上の問題で行政と国民の間でトラブルが発生することは多い。

最終的な解決は裁判によるしかないが、手数料のかからない簡易・迅速な救済手段として行政不服審査がある。

これが4月から透明性と公正さを向上させ新スタートを切った。不服審査は国民が身近に利用できる行政チェックのための制度である。新制度によって行政の民主化を着実に前進させたい。

不服審査は、社会保険料の請求や、営業禁止などの行政処分に納得できない国民が、その処分の是非について行政自身に再考・反省を求めるための制度である。裁判のような中立性はないものの利用者は多く、2014年度で国に対し約8万9000件、地方自治体に対し約2万5000件の不服申し立てがあった。

従来の不服審査は異議申し立てと審査請求の2本立てだった。前者は行政処分をしたその行政庁に不満を申し立てる制度であり、後者は行政処分をした行政庁の上級行政庁に対する申し立てである。

より公正さが期待できる上級行政庁による審査を願っても、上級行政庁がなければ不可能である。国民にとっては選択の余地がなく、公明党は制度の改善を求めてきた。

新制度は、異議申し立てを廃止し、審査請求に一本化した。その上で、公正性を高めるために、審査請求の対象となった行政処分に関与しなかった職員を審理員に当て、その審理員がまとめた裁決案をチェックするために、第三者機関(行政不服審査会)に諮問する制度も導入した。また、審査請求ができる期間も、これまでの60日間から3カ月に延長された。

さらに、不服審査をした上でなければ裁判に訴えることができない「不服申し立て前置主義」も見直された。特許法、電波法、国税通則法、国民年金法など専門性がある特別の分野を除き、国民はすぐに裁判で行政処分の是非を争うことも可能になった。

審査請求の約83%が社会保険関係であり、高齢化の進展と国民の権利意識の向上によって不服審査の重要性はさらに高まる。新制度の適正な運用が期待される。

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