e戦争を防ぐ平和安全法制

  • 2016.04.04
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年4月3日(日)付



静岡県立大学グローバル地域センター
小川和久特任教授に聞く



隙間なく日本の安全を守り、国際社会の平和と安定に貢献する「平和安全法制」の関連法が3月29日に施行されました。法制の意義などについて静岡県立大学グローバル地域センターの小川和久特任教授に聞きました。


日本を守る抑止力が向上国際社会からも高い評価


――平和安全法制が施行されました。

小川和久 いま、どの国も一国だけの力で自国の平和は守れません。戦争を未然に防ぐには国際社会と連携して抑止力を高める必要があります。平和安全法制の施行で、その実現へ大きく踏み出しました。

私は国際社会の安全保障環境は新たな段階に入ったと見ています。国同士の戦争は起きにくくなった一方、テロ組織「イスラム国」(IS)など非国家主体による危険性が増しています。前者は集団的自衛権、後者は国連平和維持活動(PKO)や海賊対処など集団安全保障のテーマです。

非国家主体に対して国際社会が歩みを同じくしようとする中、諸外国は日本が本当にあてになる国かを見ています。日本はようやく、その責務に耐え得る方向に前進したと思います。

その証拠に、国際社会は平和安全法制を支持しています。中韓両国も信頼する公明党が前のめりになりがちな議論の"歯止め"役となったことをよく分かっているのでしょう。韓国の朴槿恵大統領をはじめ、中国の執行部も、昨秋、両国を訪問した山口那津男代表に対して法制整備への理解を伝えています。

――抑止力は具体的にどのように高まるのですか。

小川 北朝鮮で言えば、抑止力が効いているからこそ、マスコミが「事実上の弾道ミサイル」と表現する人工衛星の打ち上げ名目の弾道ミサイル開発実験においても、ちゃんと大事に至らないやり方で撃っています。

また、昨年9月の米中首脳会談において、これまで抑制的に動いてきた東シナ海ばかりでなく、南シナ海についても、中国がいかに日米と戦火を交えることを避けたいと思っているかが明らかになりました。中国の姿勢をここまで変化させた根底に平和安全法制の整備があったことも、理解しておくべきです。

――日米同盟はなぜ必要なのですか。

小川 日本の安全を守るための選択肢は二つに限られます。一つは日米同盟の活用。もう一つは、どの国とも同盟を組まないで独自に安全保障能力を高める武装中立です。

日本は、日米同盟によって年間約5兆円の防衛費プラスアルファで世界最高水準の安全を保っています。一方、日米同盟を解消して武装中立で日本の安全を独自で実現するには年間約20兆円以上が必要と試算されています。果たしてその負担に耐えられるのでしょうか。安全保障政策は絵空事ではありません。

米国に対して自国の国益を徹底的に主張する姿勢が日本にある限り、「米国の要請は断れない」「戦争に巻き込まれる」などといった懸念は生じません。それだけに、現実的な議論ができない日本の現状は、民主主義の成熟にはほど遠いと危惧しています。


不安煽るレッテル貼りは安全保障のレベル下げる


――いまだに"戦争法"との批判もあります。

小川 はっきりさせないといけないのは、日米同盟による役割分担もあって、自衛隊の構造は憲法9条を絵に描いたような専守防衛の姿をしており、他国に本格的な攻撃を加える能力を欠いているということです。とても戦争なんて起こせません。

PKOなど国際平和協力活動についても、任務の拡大によって確かに自衛隊員のリスクは増えますが、これまでの条件下で国際平和協力活動を行っていた状況と比べると安全を確保する編成・装備・法制度がしっかりすることで、リスクは相対的に下がるのです。

――一部の野党やメディアが無責任な発言を繰り返しています。

小川 日本の議論には「そもそも論」がありません。そもそも日米同盟の維持を選択するなら、その機能を強化する平和安全法制は大前提です。

「自衛隊員が殺し殺される」「徴兵制が導入される」など、見識不足からくる明らかな誤報や、初めから"イデオロギーありき"でレッテルを貼り、国民の不安を煽り立てる反対派やメディアに問いたい。そのことで自衛隊への志願者が減れば国内の災害派遣も不十分なレベルになる恐れを、一度でも考えたことがあるのでしょうか。この点だけを見ても、いかに安全保障に無責任かが分かります。

公明党が与党の中で汗まみれになって踏ん張ってくれたおかげで、日本の安全保障は憲法の精神を守りながら完成度を高めることができました。日本が世界から信頼される"真の平和国家"へ進化する上で、さらに公明党に期待します。


国民への理解広がる


平和安全法制に対する国民の理解は着実に進んでいます。

昨年9月の成立時は、世論調査の多くで「反対」が「賛成」を上回っていました。しかし、産経新聞社とFNNが3月19、20両日に実施した調査では、「必要」と考える人が57.4%に上り、「必要だと思わない」の35.1%を大きく上回りました。読売新聞社の調査も、「評価」は上昇傾向にあります。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ