eコラム「北斗七星」

  • 2016.03.15
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年3月15日(火)付



「合衆国大統領の選挙の時期は国家の危機の時」。19世紀のフランスの政治思想家トクヴィルは、ジャクソン大統領時代の米国を取材して近代民主主義を論じた「アメリカのデモクラシー」(岩波書店)にこう記した。選挙が近づくにつれ、国全体が熱病状態に陥るからだという。今回の大統領選を見ていると、彼の分析はかなり説得力を持つ◆ここ数年の米国は、民主と共和の2大政党の対立が先鋭化したため、政党間の合意形成が困難になり、重要な政治課題が先送りされた。「決められない政治」が人々の政治不信を高めた、と指摘する専門家は少なくない◆そこへ躍り出たドナルド・トランプ氏。過激な発言で物議を醸しながらも、共和党の指名候補争いで先行している。大衆迎合的な主張を掲げて、政治に不満を持つ人々をあおる扇動的な手法が目に付く◆政策や公約を見ると、10年間で10兆ドル(約1100兆円)の巨額減税やメキシコ国境に不法移民を防ぐ壁の建設など、現実離れした内容が並ぶ。筋金入りの共和党員かと思いきや、小政党に所属したり民主党に籍を置いていた過去もある◆トランプ氏の指名獲得が現実味を増しつつある共和党には、危機感が広がっているそうだ。非現実的な政策が拍手喝采を浴びる政情で大丈夫か。決して、対岸の火事ではない。(明)

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