eコラム「北斗七星」

  • 2016.03.08
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年3月8日(火)付



新聞記者になって40年近く経つが、今でも忘れられない新入社員時代の失敗談がある。暮らしのページを担当していたときのこと。著名なファッション評論家のYさんに原稿依頼し、稿料は"幾ら"でと告げると「了解」との返事があった。ところが、ここで双方に大きな勘違いが生じていた◆こちらは原稿用紙2枚の総額を提示したつもりが、Yさんは1枚"幾ら"と認識していた。原稿を受け取りに行った際に、そのことが判明。「とんでもない」と叱られ、頭の中が真っ白に◆全面的に悪いのはこちらで「先生のご提示された額を支払います」と話すと、同評論家は「確認しなかった私も悪い、今回はあなたの提示額でけっこう」と応じてくれた。「それでは失礼になりますので」と返事すると、「あなた自腹を切るつもりね」と見透かされてしまった。「いい勉強になったでしょう」と諭された◆失敗には「良い失敗」と「悪い失敗」があるという。あの失敗がどちらだったかは分からないが以後、稿料で著者に迷惑をかけたことはない◆発明王エジソンは「私は今までに一度も失敗をしたことがない。電球が光らないという発見を、今まで2万回したのだ」と語っている。あと1カ月もすると、多くの新社会人が誕生する。次につながる「良い失敗」を経験してほしい。(爽)

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