eコラム「北斗七星」

  • 2016.01.27
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年1月27日(水)付



「6歳の時大好きな父は海の事故で亡くなりました。(略)立派な栄養士になって家族を支えるよう頑張ります。私が父の子どもであったことに感謝します」。編集部に送られてきた『父の背中』(海文堂)と題した本に、高校3年生が書いていた一文を引用させていただいた◆本の題字の添え書きには、「漁船海難児育英会」設立45周年として発刊された「漁船海難遺児と母の文集」とあった。同書は漁船事故で夫や父を亡くした人たちの文集だった◆四方を海に囲まれた日本は、昔から多くの人が漁業を生活の糧として生きてきた。毎日、全国で出漁する父を見送ってきた子どもも多かったことだろう。最近は減少傾向にあるとはいえ、2014年11月1日現在でも漁業就業者数は17万人を超えている(農林水産省調べ)◆「漁船海難児育英会」で支援している遺児(奨学生)は、昨年8月時点で240人余というが、設立当初は4000人近くもいたという。文集を読めば不幸に見舞われた悲しみが伝わってくる一方で、「わが家」「わが子」のために働いてくれた「父の偉さ」さらには子育てに奔走した母親の偉大さが伝わってくる◆昔から「親の背を見て子どもは育つ」と言われてきたが、改めて"わが身の背中"がわが子にとってどう影響したのか考えてみたい。(流)

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ