eコラム「北斗七星」

  • 2016.01.25
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年1月23日(土)付



地球上には一体、どれほどの生物種がいるのか。確認されているのは190万種だが、半数以上占める昆虫に限っても、実際は2~5倍いると見込まれるらしい。丸山宗利著『昆虫はすごい』(光文社新書)で知った◆種数が特定できないのは、科学的に判定するのが困難だからだ。それに比べると、既知の生物の特性に着目し新技術を開発するのは難しくないのだろうか。かつて小欄で、クモの糸を量産できる技術を開発したベンチャー企業を紹介したことがあった◆クモの糸の強度は鉄鋼の4倍。伸縮性はナイロンより優れ、300度の高温でも変質しない耐熱性もある。クモの糸の量産技術を発表した企業は今、産業用から医療用まで「石油由来の従来素材を代替する未来を描いている」(日経)という◆片や大学での研究も熱い。中央大・中村研究室はミミズのぜん動運動を参考に「配管検査ミミズロボット」を開発。東京工業大・塚越研究室はカタツムリの粘液に注目し「壁面移動ロボット」の研究成果を発表。インフラ点検に活用したい考えだ◆創造的生き方には三段階あるとしたニーチェは、最終段階を「子ども」とした。既成概念にとらわれず発想するのが、真の創造者という意味だ。生物の特性に目を向け開発に挑む人々。それらを支える、懐の深い社会を築くのも政治の役割だろう。(田)

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