eコラム「北斗七星」

  • 2016.01.14
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年1月14日(木)付



「人を動かすのに圧力は無用」とは、企業経営研究で著名な佐々木常夫氏の言説(角川新書「決定版 上司の心得」)。「そもそも、『人を動かそう』という発想自体が、リーダーシップの本質から外れている」と◆事を成そうとするとき大切なのは「己の中に『自分の志をなんとしても実現したい』という強い想いがあるかどうか」「その想いが本物であれば、必ず周りは動きだす」と訴える◆同氏が要職を勤めた東レが生み出したヒット商品の浄水器「トレビーノ」。当初、まったく売れなかった同浄水器をメガヒットと呼ばれる商品に押し上げたのは、入社4年目の女性・Sさんだった。一人の熱意が会社全体を動かした快挙と佐々木氏は振り返る◆Sさんは外国企業への飛び込み営業、それが成功すると注文に応じる生産体制の確立などに奮闘。生産数が急激に増大する工場の説得、人員や予算の確保など、一つ一つ粘り強く交渉を重ねていった。その際、佐々木氏がSさんの行動で特に評価しているのが「決して電話一本で済まそうとせず、何度も工場に出向いて説明と説得を重ね、協力を取り付けた」という点◆近年、電話やメールで用を済ます傾向が指摘されているが、熱意を持って、直接会って語ってこそ相手の理解が本物になるということを、肝に銘じたい。(爽)

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