e指定廃棄物処理 決断に応え、福島再生加速を

  • 2015.12.17
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年12月17日(木)付



東京電力福島第1原発事故から4年9カ月、放射性物質に汚染された稲わらや下水汚泥など「指定廃棄物」を処分する計画がようやく動き出す。

福島県と第1原発周辺の富岡、楢葉両町が国の最終処分場設置計画の受け入れを正式決定したもので、指定廃棄物を抱える東北・関東6県の中では初のケースとなる。

国は地元2町が下した「福島全体の復興を進めるための苦渋の決断」(宮本皓一・富岡町長)の重みを全身で受け止め、安全と安心の確保に万全を期さねばならない。

とともに、これを弾みに福島再生の歩みを一層加速させることも必要だ。除染、風評払拭、住民帰還など山積する課題の解決をもっと迅速に、もっと確実に進めていく覚悟を改めて固めてもらいたい。

1キログラム当たりの放射線量が8000~10万ベクレルの指定廃棄物は、福島、宮城、茨城、栃木、群馬、千葉の6県で計16万4000トンに上る。

このうち、福島県は13万8000トンを占め、県内28市町村に広がる。ごみ焼却場や農地などでの一時保管が長引く中、突発的な事故への懸念や健康面への不安は高まる一方にあり、住民の生活再建の足かせともなっている。

こうした中、環境省は6県に1カ所ずつの処分場を建設する計画を立て、福島県については富岡町にある既存の民間産業廃棄物処分場を国有化して、ここで最終処分する方針を提示。2年に及ぶ交渉を経て、今回の決着となった。

ただし、これで直ちに搬入できるわけではない。既存施設の補強や搬入路の新設工事が必要なほか、地元と結ぶ安全協定や地域振興策の具体化作業もこれからだ。国有化に伴う管理・運営体制も固まっていない。環境省は「順調に事が運んだとしても1年近くかかる」と見込んでいる。

最大のネックは、「帰還が一層遠ざかりかねない」として、地元2町の住民の一部に反対の声がなお根強くあることだろう。

大幅に遅れている福島以外の5県での処分計画を進めるためにも、国は処分場の必要性や放射線に関する情報・知識を丁寧に伝え、住民の理解を得ることが肝要だ。誠心誠意、粘り強い対話を続けてもらいたい。

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