e軽減税率のポイント

  • 2015.12.14
  • 情勢/経済

公明新聞:2015年12月13日(日)付



対象品目、納税事務



2017年4月の消費税率10%への引き上げと同時に導入する軽減税率に関し、自民、公明の与党両党が合意した制度設計のポイントと、公明党の取り組みをまとめました。


対象品目


加工品を含む食品全般で痛税感軽く


消費税の軽減税率は、「生鮮食品」に「加工食品」を加えた食品全般が対象品目になります。ただし、酒類や外食は対象外です。対象品目の税率は8%に据え置かれます。


軽減税率は、所得が低い人ほど負担感が重くなる消費税の逆進性や、増税に伴う"痛税感"を緩和するために導入されます。低所得者は家計の消費支出に占める食料費の割合(エンゲル係数)が高く、食品への軽減税率適用は、その負担感を軽くする効果が期待されます。


また、14年4月に消費税率が8%へと引き上げられた際、個人消費は予想以上に大きく落ち込みました。痛税感によって国民の消費意欲を冷え込ませないためにも、軽減税率は必要です。


これまで政府や与党内の協議の中では、対象品目を生鮮食品に絞る案も出されていました。しかし、家計の食料支出に占める生鮮食品の割合は約3割にすぎず、加工食品は約5割に上ります。


公明党は、消費税率引き上げに対する国民の理解を得る観点からも、「対象品目を幅広くすべき」と一貫して主張し続け、加工食品まで広げさせることができました。


財源は約1兆円規模と見込まれています。今後、与党として、安定的な恒久財源の確保を協議していきます。公明党は、軽減税率の財源を赤字国債に頼ることはせず、あくまでも税制・財政全体の中で、安定財源を確保することをベースに検討していく考えです。


納税事務


当面は現行方式をベースに「簡素な経理」


軽減税率を導入すると、全国に約800万ある事業者の事務負担が増えると懸念されています。


そこで事業者の負担を軽くするため、17年4月の軽減税率導入から当面は「簡素な経理方式」を採用し、中小事業者には特例を認めることにしました。簡素な経理方式は、現行の請求書等保存方式から変更点を極力少なくしたものです。


現行方式では、商品の販売時に、受け取った税額から仕入れで支払った税額を差し引いて消費税を納めています。軽減税率の導入後は、これをベースに帳簿や請求書の軽減税率対象品目に「※」といった印を付け、税率が8%と10%の商品を区分して納税額を計算します。


税率ごとの区分経理に対応できない小規模事業者に対しては、課税売上高が1000万円以下であれば、納税義務を免除する制度を存続させます。対象となる事業者数は約500万です。


実際に納税事務を行うのは残りの約300万事業者となる見通しです。その中でも、売上高が1000万円超、5000万円以下の事業者には「インボイス(適格請求書)制度」が始まるまでの間、売上総額の一定割合を軽減税率対象品目の売り上げとみなして税額を計算する「みなし課税」が認められます。


21年度からインボイスで納税額を正確に


「簡素な経理方式」を経て、21年4月1日から導入されるのが「インボイス(適格請求書)制度」です。商品の売り手が、買い手となる事業者に発行するのがインボイスです。そこには、現行の請求書の内容に加え、標準税率と軽減税率ごとの取引額と消費税額、事業者ごとの登録番号などが記載されます。


これによって、10%と8%のように税率が複数でも納税額をきちんと計算できるようになります。また、インボイスを偽造するといった不正発行には、罰則を設けることになりました。


納税額が明確になることで消費税の転嫁がしやすくなります。事業者間の取引で、立場の弱い方が消費税分を価格に転嫁できずに負担する"泣き寝入り"を防ぐこともできます。


売上高が1000万円以下の事業者は、免税制度を維持します。その一方で、免税事業者は消費税を納税する義務がなく、インボイスの発行を義務付けられていないため、免税事業者から商品を仕入れた場合、その商品に掛かる消費税分を納税事業者が肩代わりすることになります。その税負担を一定分、抑える特例を6年間設けることにしました。


公明党の取り組み


公明党は、軽減税率の導入を公約に掲げ、その実現に向けて一貫して取り組んできました。


2012年、当時野党だった公明党は、民主、自民両党との社会保障と税の一体改革協議で「消費税率の引き上げに際しては低所得者対策が必要だ」と強く主張。その選択肢の一つとして3党合意の中に軽減税率を盛り込ませました。


自公政権の再出発後、14年度の与党税制改正大綱に「(軽減税率を消費税率)10%時に導入する」ことを明記しました。さらに15年度大綱には、消費税率を10%に引き上げる「17年度からの導入をめざして」と記し、導入時期を着実に固めていきました。


14年末の衆院選では、自民、公明の与党両党の共通公約にも軽減税率の実現を掲げて戦い、大勝利しました。


公約実現をめざし、自民、公明の与党両党は、軽減税率の制度設計について協議を加速。公明党は経理方式に関して、事業者の負担が重くならないよう、現行方式をベースにした党の独自案を発表しました。これが与党協議のたたき台となって具体化されました。


対象品目を「生鮮食品に限定すべき」という意見が出た際は、多くの国民がスーパーの総菜など加工食品を日常的に利用しており、所得の低い人ほどその傾向が強いと主張。「対象を幅広くすべきだ」と訴えていました。

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