e「あかつき」金星周回 快挙を地球温暖化解明の前進に

  • 2015.12.11
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年12月11日(金)付



日本の惑星探査史上、初の快挙を喜び合いたい。


日本の金星探査機「あかつき」が、金星を回る軌道への投入に成功した。あかつきは2010年にも軌道投入をめざしたが、主エンジンの故障が発生したため、断念した。それから5年ぶりに再挑戦し、周回軌道に入ることができた。日本の探査機が惑星の周回軌道に乗ったのは今回が初めてだ。探査を日本の宇宙開発の弾みとしていきたい。

金星は、地球とほぼ同じ大きさで、内部構造もよく似ているため「双子星」といわれる。だが、気象は大きく異なる。金星は、大気の大半が二酸化炭素のため温室効果が著しく、地表の温度は500度近くに達する灼熱の惑星だ。

しかも、金星は濃硫酸の雲で覆われ、上空はやむことのない超回転の暴風「スーパーローテーション」が吹き荒れている。その速度は自転の約60倍に達する。これは地球には見られない。特異な金星の気象を調査するため、日本はあかつきを送り込んだ。極端な温暖化の謎を解くことで、地球における温暖化メカニズムの解明につなげてほしい。

あかつきは、異なる波長による観測カメラによって惑星を覆う雲の下まで透視し、気象の仕組みに迫る。あかつきから既に送られて来た中間赤外カメラの画像には、これまで謎だった雲の構造も見られる。来年4月から2年間の本格観測が始まるが、得られるデータは世界の研究に貢献することになろう。

近年、各国の宇宙開発競争は激化している。日本は限られた予算の中、さまざまな教訓を最大限に生かしている。主エンジンの故障を乗り越えて軌道入りしたあかつきは、多くのトラブルに見舞われ小惑星からの帰還に成功した「はやぶさ」とも重なる。今回の成功は、日本のものづくりの底力をあらためて証明した。実際、あかつきには国産機材が多く搭載されている。

宇宙開発の技術は、国民生活にも生かされる。気象情報やGPS(全地球測位システム)付き携帯電話など、日常生活まで浸透している。今後、地震や火山噴火など災害時の情報伝達分野での貢献も期待されている。国民生活向上のためにも、政府は宇宙開発を後押ししてもらいたい。

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