eコラム「北斗七星」

  • 2015.11.12
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年11月12日(木)付



民主党が政権を失って、約3年になる。「政権交代は残念ながら挫折に終わった」(朝日新聞11月5日付「天声人語」)との声もあるが、「終わってよかった」と思うことは多い◆今年のノーベル医学生理学賞に選ばれた大村智・北里大学特別栄誉教授の評伝、『大村智 2億人を病魔から守った化学者』(馬場錬成著、中央公論新社)を読んだ時もそう思った◆大村氏は産学連携の草分けだ。製薬企業から研究資金の提供を受け、有用な化学物質を見つけて特許を取る。企業は特許の使用権を得て、医薬品を開発、売上高に応じた特許料を大村氏に支払う。この「大村方式」は、研究室の充実や人材育成につながった◆馬場氏は、「なぜ、世界第2位ではだめなんでしょうか」という当時の閣僚(民主党)の詰問について、「学術研究の現場は、世界で初めての発見や初めての理論構成の完成だけが価値を持つ。世界初でなければ、特許も取れないしノーベル賞も受賞できない」と論じている。特許取得がなければ、「大村方式」の好循環は実現しなかっただろう◆科学や技術に無理解な政治が終わったことは、日本に幸いだった。与党と激しい対決を演じさえすれば、自民党に次ぐ議席が期待できる民主党。居心地の良い第2位で、責任政党に脱皮するチャンスはさらに遠のく。(山)

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