e不足するホール・劇場 公的施設の環境整備し利用促せ

  • 2015.11.11
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年11月11日(水)付



これから年末にかけて芸術イベントはたけなわとなり、多くの人が楽しみにしていることだろう。ところが今後、こうした機会が十分に確保できるか心配する声が上がっている。


首都圏の劇場やコンサートホールで、老朽化による閉鎖や建て替え、改修が相次ぎ、施設が不足しているからだ。


ここ数年、東京都内だけでも新宿コマ劇場や青山劇場など、名だたる大規模な施設が次々に閉館。最近も"バレエの殿堂"と呼ばれた施設が閉館して多くの団体が活動拠点を失うなど、影響を受けている芸術団体は少なくない。


来年以降も、大きな収容能力を持つ施設が改修予定で、施設不足に拍車が掛かるとみられる。


このままでは、芸術家は発表する場を奪われ、私たちの文化に触れる機会が限られてしまいかねない。


折しも、2020年の東京五輪・パラリンピックの一環として、五輪憲章で開催が定められている「文化プログラム」が、来年から国内各地で始まる。世界に向けて、日本文化を発信する機運を高める絶好の機会だが、こうした状況では心もとない。早急に対策を検討しなければならない。


その具体策の一つとして、公的施設の活用を進めてはどうか。新国立劇場から各自治体のホールに至るまで多くの公的施設がある。しかし、使用可能時間や申請から使用までの準備期間の短さなど、民間の施設に比べて不便なため、使われないケースが目立つ。使用条件の見直しとともに、大規模な施設を持つ大学などにも協力を促すなど、政府や自治体は使い勝手をよくするための環境を整備してもらいたい。


積極的な情報提供も欠かせない。通常、芸術公演を行う際は、練習やリハーサルも同じ施設で行う場合が多いが、少しでも多くの芸術家や団体が利用できるように、本番以外は別の会場で行えるよう手頃な場所を紹介することも一つの方法だろう。


活動拠点を失った芸術団体と新たに利用できる施設とのマッチングも必要だ。


政府や自治体は、関係団体の意見をよく聞きながら早急に対策を講じてほしい。

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