e歩きスマホ 迷惑で危険な行為なのに何故!?

  • 2015.11.10
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年11月10日(火)付



「行ってきます」。家を出るとイヤホンを耳に付け、スマートフォン(スマホ)で音楽を聴き始める。最寄り駅に到着するとメールが入った。スマホを操作しつつ乗車ホームへ向かう。返信を送ろうとした瞬間、ホームから足を踏み外し線路上に転落。幸い、電車は来なかったが......。


まるでドラマのワンシーンだが、人ごとではいられない。2010~14年の5年間で、スマホの画面を見ながら歩行する「歩きスマホ」の関連事故によって救急搬送された人は、東京都内だけで計152人に上る(東京消防庁の統計)。若者の問題かと思いきや、搬送数が一番多いのは意外にも40代で36人。入院や死亡に至った例もあった。


自分がけがをするだけでなく、高齢者や体の不自由な人にぶつかって負傷させてしまう可能性もある。歩きスマホをしている時の視野は、通常歩行時の約20分の1に狭まるという。さらに音楽を聴くなどして耳をふさいでしまうと、周囲の情報はほとんど入らない。ヒヤリとした経験を持つ人は少なくないだろう。


当事者はどう考えているのか。電気通信事業者協会の調査によると、スマホ保有者の91%は歩きスマホを迷惑だと感じている。それでいながら、半数近くは歩きスマホが習慣化し、3人に1人は他人にぶつかりそうになった経験がある。


こうした実態を踏まえ、JR東日本と携帯電話大手3社は今月14日まで、歩きスマホの防止を訴えるキャンペーンを首都圏の主要駅で実施している。携帯大手らは、歩きスマホをすると警告画面が表示されるアプリケーションの配信も行っている。危険性を周知し、事故を防ぐ取り組みを続けていくべきだ。


海外では規制に乗り出したケースもある。米国のニュージャージー州フォートリーには、歩きながらスマホでメールをすることを禁じる「歩きスマホ規制条例」があり、違反者には85ドル(約1万円)の罰金が科されるという。


路上喫煙は、喫煙者のマナーやモラルに委ねて防ごうとする動きがあったが、最終的に条例で規制する自治体が増えた。できれば、歩きスマホの防止は、この轍を踏みたくない。

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