eコラム「北斗七星」

  • 2015.11.06
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年11月6日(金)付



沖縄の工事現場からは実に色々なモノが出てくる。不発弾や遺骨が見つかることも少なくない。沖縄に赴任して5年余り。自衛隊の不発弾処理車両がサイレンを鳴らしながら現場に急行する光景にも、すっかり慣れてしまった◆発見されるのは、それだけではない。那覇市の再開発地で先ごろ、沖縄の交通産業にとっての史料となるかもしれない遺構が出土した。円形状の赤レンガ造りで、その直径は約8メートル。戦前の県営鉄道・那覇駅にあった転車台とみられている◆12年前に都市モノレールが開業するまで、沖縄は全国で唯一、鉄道のない県だった。だが戦前は、もちろん沖縄にも鉄道があったのだ。県営鉄道は1914年に開業。那覇を起点に与那原町、嘉手納町、糸満市へ延びる3路線で運行されていた。今もあれば便利だったに違いない◆しかし沖縄戦で壊滅状態に。戦後は米軍統治下に置かれ、国が鉄道を全国に敷設していく一方で、沖縄は鉄道復活の機を逸した。現在、車社会となった沖縄の渋滞は慢性化。那覇市の混雑時旅行速度は東京23区よりも遅く、全国ワーストだ◆そんな沖縄で今、モノレールの延伸とともに鉄軌道導入の検討が進んでいる。経済発展や渋滞緩和になると期待は大きい。戦争で失った鉄軌道は県民の夢。実現の暁には、ぜひ乗ってみたい。(治)

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