e国家戦略特区 先進的事業を成長の突破口に

  • 2015.10.26
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年10月26日(月)付



政府は先週の国家戦略特区諮問会議で、旅館業法の特例として一般の住宅などを宿泊施設として活用する、いわゆる「民泊」など14の事業計画を認定した。地域を限って集中的に規制を緩和する特区の事業は、成功すれば同様の取り組みが全国に広がり、地域活性化が期待できる。事業の成否を注視していきたい。


国家戦略特区は、世界で最もビジネスしやすい環境の整備を目標に、国際主要都市に負けない都市づくりをめざすものだ。従来の特区では、自治体が個々の特性を生かして地域活性化に取り組むことが多いのに対し、国家戦略特区の事業は、都市の国際的競争力を高め、国全体の成長につなげるという側面が強い。


民泊をめぐっては、東京都大田区が来年1月から事業を解禁する方針で、訪日客の増加に伴う羽田空港周辺のホテル不足解消を進める。


大田区の事業に対する関心は高い。民泊の普及は、多くの自治体にとって、訪日客を呼び込み、地域経済を底上げする好機となるからだ。


ただ、課題も少なくない。日本の旅館業法は、宿泊事業者ではない個人同士の取引を想定したものではない。民泊利用者が同法をどの程度守っていくか定かでないため、安全面や衛生面の懸念も指摘される。


このため、大田区では、安全面への配慮から行政の立ち入り権限などを盛り込んだ条例を年内にも制定する方向だ。無用なトラブルを防ぐ制度を考案してもらいたい。


国家戦略特区では、民泊のほかにも幅広い試みがなされている。


24日には、特区として認められた大阪府など4府県で、待機児童解消に向けて新設された地域限定保育士の初めての試験が行われた。勤務できる地域は試験に合格した特区に限られるものの、保育士試験を受ける機会が増えたことは希望者に好意的に受け止められ、神奈川県では想定した受験者の2倍近い申し込みがあったという。

国家戦略特区の取り組みは、日本社会が直面するさまざまな課題の突破口になり得るものだ。政府は、国民のニーズ(需要)を適切に反映させた時代に見合ったルールづくりを進めてほしい。

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