e川内村避難解除1年 帰還促進へ国は一層の支援を

  • 2015.10.16
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年10月16日(金)付



東電福島第1原発事故に伴い、福島県川内村の東部地域に出されていた避難指示が解除されてから1年が過ぎた。


村によると、この間に帰還した住民は、対象139世帯274人中、26世帯45人。解除直後の10世帯20人程度、あるいは今年1月時点の21世帯29人よりは進んでいるものの、今なお帰還率が2割に満たないのは、いかにも残念だ。福島再生の困難さを改めて思わないわけにはいかない。


帰還促進に向けて何が不足しているのか。解除1年を機に、国は地元住民の声を再聴取し、これまでの施策を総点検する必要があろう。併せて、県や村と一体となって、より有効な手だてを講じるべきことも要望しておきたい。


遠藤雄幸村長は、帰還の動きが鈍い要因として、放射線への不安とともに、帰還後の生活の不便さを挙げている。


原発事故前、村東部の住民は、買い物や医療など生活面の多くを隣の富岡町や大熊町に依存していた。しかし、両町は今も全域が避難区域に指定されたまま。「このことが帰還をためらわせている」(遠藤村長)というわけだ。


こうした状況を改善しようと、村は避難者向け復興公営住宅を建設するなど、生活インフラの整備に全力を注ぐ。来月には特別養護老人ホームがオープンし、コンビニや薬局などが入る公設民営型の複合商業施設も年度内に開業する予定だ。工業団地の建設計画もある。


放射線対策でも、線量測定や健康調査・相談などを行う研究施設を、長崎大学などと共同で開設した。


問題は、これらせっかくの施策が県内外に避難する住民に十分に伝わっていないことと、各事業のスピード不足だ。もう一段の工夫が村に求められるが、それ以上に国の支援が欠かせないことを忘れてはならない。


折しも政府は13日、村東部でなお残っている避難区域(19世帯54人)の指示解除に向けて、来月1日から帰還準備宿泊を始めることを決めた。この後発区域の住民のためにも、さらには同じく避難指示区域を抱える他の市町村の人々のためにも、政府は川内村を「帰還モデル地域」にする覚悟で、より一層の支援に取り組んでもらいたい。

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