eコラム「北斗七星」

  • 2015.10.13
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年10月10日(土)付



スポーツジャーナリストの二宮清純氏は、数々の名勝負を取材している。講演で以前、一番感動した場面としてソウル五輪(1988年)背泳ぎ100メートル、鈴木大地選手の金メダルを挙げていた。バサロ(スタート後の潜水)に世界が度肝を抜かれた決勝戦だ◆本命、バーコフ(米国)との予選差は1秒39。「メダルは困難」と見られた鈴木選手は捨て身の作戦に出る。練習でも25メートルだったバサロで30メートルに挑んだ。バーコフが慌てたのは言うまでもない。重圧に弱い日本人選手が見事に心理戦を制した◆それ以上に二宮氏を感動させたのは、彼の執念だ。1ミリの勝負と予想し、爪を3センチほど伸ばしていたという。指が折れるほど強くゴール板を突いた。バーコフとの差は0秒13。まさに爪の差で「金」をつかんだ。二宮氏は「勝つか負けるかの分水嶺は執念。最後は実力ではなく、準備力の差」と語る◆スポーツ施策の司令塔として、公明党が主張してきたスポーツ庁が設置された。鈴木初代長官の下、2020年東京五輪・パラリンピックへ向けて、選手強化が本格化する◆51年前の今日、国立競技場で東京五輪の開会式が行われた。日本の成長を世界に印象付けた大会では、数多くの名場面が誕生した。半世紀を経て、今また、新たな勝利のドラマが人知れず始まっているに違いない。(也)

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