e多国籍企業の課税逃れ 実効性の高い税収確保策に

  • 2015.10.09
  • 情勢/経済

公明新聞:2015年10月9日(金)付



経済協力開発機構(OECD)が、世界規模で事業展開する多国籍企業による課税逃れの防止策を発表した。


防止策は「税源浸食と利益移転(BEPS)行動計画」としてまとめられ、特許を実態より安く同一企業グループ内で譲渡して課税を逃れる行為などに対して追徴課税できるようにしている。OECDは11月の20カ国・地域(G20)首脳会議で内容を報告し、2016年末の多国間租税協定策定をめざす。


対策は国家間で異なる税制度の違いを狙った過度な節税行為を封じ込め、国際規模での徴税漏れを止めることにつながるだろう。


主に欧米に本社を置き、日本に進出する多国籍企業の国内での徴税漏れは、1999年から07年で計約20兆円に達するとの試算がある。


国内で事業を行う企業は、税金で整備する道路などを活用しており、それらのインフラや行政サービスを利用する企業は応分の納税義務が生じる。事実、日本に参入する多くの外資系企業は適切に納税している。多国籍企業の課税回避分は国民の税負担に転嫁されるわけだから、この点でも見過ごしにできない問題だ。


既に日本政府は15年度の税制改正で課税逃れ対策の強化を打ち出し、今月からインターネットを通じた海外からの電子書籍販売や音楽配信に消費税を課している。OECDの防止策は、日本の取り組みを後押しするだろう。


一方で防止策は、海外に進出している日本企業が、新興国と日本の両国で事業所得に二重課税される問題に対策を講じている点も評価できる。税体系が整った先進国と異なり、新興国は税収確保の観点から現地法人の所得に過剰に課税する傾向がある。このため、二重課税を恐れて新興国での事業展開に二の足を踏む日本企業が少なくないが、この対策で新興国との税務紛争を抑止できるだろう。


今後の課題は、強固な課税逃れ防止体制の構築に向けて、各国が連携して対策を開始できるかどうかだ。来年から各国で法制化が進むが、その際に防止策の解釈が国家間で食い違うと実効性は半減する。OECDが主導して、当局間の意思疎通を強める場を設けることも必要ではないか。

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