eコラム「北斗七星」

  • 2015.09.25
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年9月25日(金)付



台風21号が沖縄に接近しつつあるが、明日26日は、統計上、台風が日本列島に上陸する回数が多い特異日だという。過去に「洞爺丸台風」(1954年)、「狩野川台風」(58年)、「伊勢湾台風」(59年)が襲来している◆このうち「洞爺丸台風」では、洞爺丸など5隻の青函連絡船が遭難し、1430人の死者・行方不明者が出た(函館市資料)。その犠牲者を悼む「洞爺丸慰霊碑」をバスの車窓から目にしたことがある。背後に見える函館湾の海は実に穏やかだった◆台風報道で聞く「波の高さ10メートル」などといった姿は普段の海からは想像もできない。自然の怖さは、そんなところにあるのだろう。台風の豪雨で堤防が決壊し、濁流に立ち往生した観光バス(2004年)乗客の体験談を以前読んだことがある◆元看護師・中島明子さんの『バス水没事故 幸せをくれた10時間』(朝日新聞出版)。最終的には乗客乗員37人全員が助かったが、救出が来るまでバスの屋根上で過ごした10時間あまりの様子が詳しく記されていた◆心に残った著者の言葉がある。「生きるか死ぬかという極限状態で、人間が本来持っている善なる『助け合う心』、『他人を思いやる心』というものの力をこの身で体験できた」◆いざというとき、そんな心を発揮できる一人でありたい。(六)

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