e救急車の出動増加 搬送体制を維持するためには

  • 2015.09.10
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年9月10日(木)付



9月6日から救急医療週間(12日まで)が始まっている。高齢者の増加で救急医療の需要は高まっており、必要な人に適切な医療サービスが届く環境づくりを進めなければならない。



近年、救急車の年間出動件数は過去最高を更新し続け、2014年は約598万件に上る。気掛かりなのは、患者の搬送時間が伸びていることだ。13年は「119番」通報してから患者が医療機関に到着するまでの時間が全国平均で約39分となり、10年前に比べ10分程度も伸びている。出動要請の増加で救急車が足りず、遠くの消防署から出動する事例が増えたことが一因だ。消防庁によると、救急搬送される人の約半数は軽傷で、緊急性が低いという。


救急出動には費用がかかるので、自治体の負担も年々膨らんでいる。6月には財務省の審議会が、地方財政の改善につなげるため救急車利用の一部有料化を提言する事態にまで至っている。


しかし、有料化は住民の理解が得られまい。利用料負担を避けるために出動要請を控える重症者が増えれば、取り返しのつかない事態を招かないか心配だ。所得の低い人ほど影響が大きい点も見逃せない。有料化を防ぎ、患者の搬送時間を短くするために、重症者を選別する何らかの仕組みを普及させていく必要があるのではないか。


例えば、東京都は救急車が現場に駆け付けても、急ぐ必要がないと救急隊員が判断すれば、自分で医療機関に移動してもらう制度を07年に導入した。導入時の検証では、緊急性がないと判断された患者の約6割が搬送を辞退し、救急車が次の出動までに掛かる時間を全体として約17分短縮できたという。


電話番号の「#7119」にダイヤルすると、24時間態勢で医師らが対応する救急相談センターを設置している自治体も多い。救急搬送が必要かどうかを相談できる同センターの利用で、救急医療機関の時間外受診者や「119番」通報する患者を減らす効果が確認されている。


救急搬送の増加傾向は全国に共通する。自治体は重症者を選別する工夫を上手に取り入れ、住民が納得して協力できる体制を築いてほしい。

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