e住民帰還の道筋つける一歩に

  • 2015.09.04
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年9月4日(金)付



困難区域初の本格除染



東京電力福島第1原発事故で全町避難が続く福島県大熊町の「帰還困難区域」の一部で、国による本格的な除染作業が始まった。


年間の被ばく線量が事故直後に50ミリシーベルトを超え、長期間にわたり住民が戻るのが難しいとされる「帰還困難区域」内での本格除染は初めて。即時的な成果を期待するのは禁物とはいえ、ほとんど手付かずで来た同区域の除染に着手した意味は小さくない。一向に見えてこない高放射線量地域の再生と住民帰還の道筋をつける確かな一歩としたい。


本格除染は、一定の面積を持つ地域全体の放射線量を下げるために広域的に実施されるもので、今回作業が始まったのは、同町の帰還困難区域の中では比較的線量が低い下野上地区400ヘクタールのうちの95ヘクタール分。周辺は町役場や学校などの公共施設が集中する震災前の中心地で、町は隣接する居住制限区域の大川原地区とともに将来の復興拠点と位置付けている。


作業は本年度中に完了する見込みで、環境省はその後、除染の効果を検証した上で、残る305ヘクタールの除染も進める方針。検証結果次第では、原発周辺7市町村に広がる全ての帰還困難区域も含めた避難指示区域の再編も検討することを示唆している。


それだけに、大熊町民はじめ周辺市町村の住民が寄せる「95ヘクタールの本格除染」への期待と関心は高い。環境省は線量低減効果を的確に把握し、その数値を地元に示しながら、帰還困難区域の復興の絵姿の確立に努めてほしい。


同省福島環境再生本部によると、除染によって空間線量がかなり低下することはすでに福島県内各地での作業を通して確認済みだ。同省が2013年度に帰還困難区域内のピンポイントで実施した「帰還困難区域除染モデル実証事業」でも、空間線量率は全てのポイントで大幅減少し、その後も効果が維持されることが分かっている。


こうした成果の上に立って始まった待望の本格除染。その作業を通して、放射線量にかかわる基礎データの収集が大幅に進み、より効率的な除染技術・工法が開発されるなら、福島再生の展望は大きく開けゆくはずだ。今後の成り行きを注視していきたい。

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