eコラム「北斗七星」

  • 2015.08.25
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年8月25日(火)付



戦後30年の1975年に出版された有吉佐和子著「複合汚染」。今年で40年となる古い上下巻を手にすると、著者の取材力と筆力に圧倒された駆け出し記者時代を思い出す◆有吉さんは人間の生命を脅かす公害問題に鋭い目を向け、時代を先取りする作家と評された。だが、ご本人はそんな評価を嫌った。月刊誌の対談で「いまいちばん心外なのは、時代の先取りをする作家だといわれること」「『複合汚染』を書いた理由も知識を持ってないと大変だということが根本にあった」と◆作家である前に一人の人間として現場取材に徹し、大切なことを人々に伝えたいとの強い責任感がうかがわれる言葉だ。また、住民運動をしている人たちの中に元右翼がいて共産党や社会党が邪魔する例があることを取材した有吉さんは、「民族の危機とか、生命の危機に右翼も左翼もあるものか」と喝破した◆知られているように「複合汚染」には、「公害に最も大きい関心を寄せ、熱心に勉強し、実績をあげている政党は、どの革新政党よりも公明党だと、住民運動をしている人たちは口を揃えて言う」との記述も。丹念な取材を感じさせる文章である◆今年も有吉さんの命日8月30日が巡り来る。業績を偲びつつ、新聞編集に携わる者として、取材力と筆力を磨いていかねばと決意を新たにする。(鈴)

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ