e中国は世界経済の混乱防げ

  • 2015.08.18
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年8月15日(土)付



人民元の引き下げ



各国の金融市場に大きな衝撃を与えた「元安ショック」は、ひとまず終息に向かいそうである。


中国の通貨・人民元の為替レートは、取り引きの目安となる「基準値」(対ドル)が日ごとに定められている。中国の中央銀行である人民銀行(人民銀)は突然、11日から3日連続で基準値を大幅に引き下げ、元安が急速に進んだ。10日の基準値と比べると、3日間の引き下げ幅は合計で4.5%を超え、1ドル=6.4元台となった。2011年8月以来、4年ぶりとなる元安ドル高の水準である。


これにより、ニューヨーク株式市場ではダウ平均株価が一時、270ドル以上値下がりした。日経平均株価も11、12日の2日間で400円以上値を下げた。


人民銀は13日、「今後は基準値の引き下げ幅を縮小していく」との方針を示し、14日には基準値が前日比で元高ドル安に設定されたことで、各国の市場は落ち着きを取り戻しつつある。しかし、今回の引き下げはあまりにも唐突であり、中国の意図的な「元安誘導」ではないかとの憶測が広がっている。


中国税関総署が8日に発表した7月の貿易統計によると、中国の輸出と輸入を合わせた貿易額は前年同月比で8.2%減り、5カ月連続で前年水準を下回っている。元安にすることで中国企業の輸出を後押しし、停滞気味の中国経済を立て直そうとしていたのではないかとの見方が根強く残っている。


もし中国がそうした理由で基準値の引き下げを今後も行うようであれば、それを他国もまねする通貨安競争を誘発し、世界経済に重大な混乱をもたらしかねない。


元安による日本への影響も大きい。中国の景気減速の影響を受け、日本の対中輸出は既に減少に転じている。元安は、日本の輸出企業にとっては、円を基調にした中国での利益が目減りすることになるため、対中輸出がさらに低迷することになるであろう。


9月に開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも急きょ、今回の引き下げが協議される見通しになっている。中国には世界第2位の経済大国としての責任ある対応を求めたい。

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