e成年後見の与党法案 担い手を育成し需要増に対応

  • 2015.07.27
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年7月27日(月)付



判断能力が不十分な人の権利を保護する成年後見制度の普及に向けた「成年後見制度の利用促進法案」と、制度の事務手続きの円滑化を進める法案(ともに議員立法)を、自民党と公明党が了承した。


利用促進法案は、3年前に公明党のプロジェクトチームが日本成年後見法学会の要請を受け、法案化したものだ。今後、野党各党に賛同を呼び掛けて今国会に提出し、早期成立をめざす。


成年後見制度は、認知症や知的障がい、精神障がいで判断能力が不十分な本人に代わり、家庭裁判所に選ばれた親族や第三者が財産を管理したり、介護や入院の手続きをする仕組みだ。昨年の利用者は約18万人に上るが、超高齢社会の到来で潜在的な需要は、この数字を大きく上回るとみられている。


そこで法案は、制度を利用しやすくするため、国が基本計画を策定することを定めた。特に計画で重要なのが、後見人となる人材の確保だ。


少子化と核家族化が進み、親族よりも専門職(弁護士や司法書士など)が後見人に選ばれるケースが増えている。だが、専門職でも担当できる人数には限りがあり、後見人が不足している地域もある。


一定の研修を積んだ地域住民が後見人となる「市民後見人」もいるが、まだまだ少ない。現在、市町村には市民後見人を育成する努力義務が課されているが、実際に研修を行う自治体は多くない。


法案は、市民後見人を育成する研修会を開く機会を確保するため、国が研修のノウハウの提供を含め、必要な支援を行うことが盛り込まれている。国は自治体をしっかりバックアップして、担い手を十分に確保してもらいたい。


法案は、成年後見人が付いた人(成年被後見人)の尊厳を守るため、制限されている権利を見直し、医療・介護などが円滑に受けられるよう検討することも明記した。


例えば、成年後見人には医療行為への同意権が認められておらず、被後見人が必要な医療を受けられない場合もある。韓国の成年後見制度では、そうした事態に備え、後見人が同意できる仕組みを設けている。これらの制度を参考にしながら、必要な支援のあり方を検討してほしい。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ