eコラム「北斗七星」

  • 2015.07.27
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年7月25日(土)付



経営学の父・ドラッカーは「強みの上に築け」と言った。その言葉通り、デフレ下で売上高7倍を達成した企業がある。2016年に創業100年を迎える霧島酒造(宮崎県都城市)◆弱小蔵元だった同社は1998年、芋焼酎「黒霧島」を発売。これが大ヒットし、同年度に約82億円だった社の売上高は13年度、約566億円に上った。デフレ期に同規模の売上増を果たした独立系製造業は、LEDの日亜化学工業(徳島県阿南市)だけという(『黒霧島物語』日経BP社)◆開発力や宣伝力、大消費地の福岡を攻略した営業力はもちろんだが、同酒造最大の強みとなったのは、55年に工場内で掘り当てた「水」だった。シラス台地でろ過された40億トンもの天然の水瓶が、他社をしのぐ品質と大量生産を可能にした◆水不足が深刻化した55年当時、同社はボーリング調査を実施。地下75メートルで固い岩盤に阻まれたが、膨大な費用を覚悟の上で92メートルまで掘り進めたところ、豊富な水脈にたどり着いた。ミネラルと炭酸ガスを含み、焼酎づくりに適した、まろやかな水は「霧島裂罅水」と名付けられ、今も、くみに訪れる人が後を絶たない◆同焼酎の売り上げ増には、記者も随分と貢献した口だ。肝臓をいたわりつつ、自らの強みを求めて足下を掘り進める鍛えの夏にしたい。(也)

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