e動き出す 地方創生

  • 2015.07.10
  • 情勢/社会
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公明新聞:2015年7月10日(金)付



人口減少や「東京一極集中」に歯止めをかけ、将来に向けて魅力ある地域づくりをめざす「地方創生」へ動き出す全国自治体の姿を追う。今回のテーマは「地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする」。群馬県安中市と鳥取県の取り組みを報告する。(毎週金曜に掲載予定



仕事づくり


創生へのポイント

・地域の強み最大に生かす
・民間の"稼ぐ力"活用
・人材確保に知恵を結集



県境越えて観光で連携



群馬・安中市



群馬県安中市と、隣接する富岡市、長野県軽井沢町を訪れる観光客は年間で計約1200万人。この2市1町が県境を越えて連携し、観光振興へ向け検討を進めている。


話が持ち上がったのは一昨年。国内有数の観光地である軽井沢町からの呼び掛けがきっかけだった。時代の変化に対応して新たな観光戦略を模索する中で、それぞれの強みを生かした観光振興を図り、地域の雇用拡大にもつなげようという思いが三者を結び付けた。


安中市は、「碓氷峠鉄道文化むら」や磯部温泉など豊富な観光資源を有する。軽井沢町との連携により発信力の強化を期待。富岡市との連携では、安中の温泉地への宿泊客増加を見込んだ。


昨年4月、2市1町は観光連携協議会を結成。観光の目玉として、碓氷峠鉄道施設(安中市)、富岡製糸場(富岡市)、旧三笠ホテル(軽井沢町)といった明治期に生まれた国の重要文化財を結び付け、新たな観光ルートをつくり出す広域観光連携が動き出した。


安中市は今年、広域での観光振興を地方創生の柱に据え、国の地方創生先行型交付金の対象にも選ばれた。5月には、民間の観光関係者を幅広く呼び集め、「地方創生観光振興プロジェクト委員会」を発足させた。


同市商工観光課の萩原弘課長は「"稼ぐ"という民間の力を生かしたい」と強調。委員の一人、磯部温泉組合の櫻井太作観光部長は「業種の垣根を越え、情報を交わすだけでも意義は大きい。地域の観光に貢献したい」と、官民ともに意気が上がる。公明党の上原富士雄市議も6月の定例会で現場の声を伝えるなど積極的に後押ししている。


今年度は、市内観光スポット10カ所に「WiFi」のアクセスポイントを設置し、周遊ルートのモニターツアーも行う。観光戦略の策定やブランド化などを一体的に行う「DMO(官民協働型観光推進体制)」の基盤づくりも進め、観光産業に関わる安定した雇用の確保・創出につなげようとしている。



産業支える人材を支援



鳥取県



鳥取県は景気の悪化などで一時、雇用が大きく落ち込んだが、県の積極的な企業立地支援により、地域経済は復調傾向にある。


2010年度から4年間で、県外からの企業誘致は50件。昨年は、東京に本社を置く人気フィギュアメーカーが県内に工場を設置し、話題を呼んだ。新規事業展開など県内企業の新設・増設も相次いでおり、約5000人の新たな雇用が生まれている。


「優秀な人材を求める企業が鳥取県を選んでいる」。県雇用人材局の高橋紀子局長が語るように、県内外の求職技術者と求人企業のマッチングを行う「技術人材バンク」や雇用奨励金など、企業の人材確保への支援が奏功し、企業進出を加速させてきた。


しかし、ここにきて、上向き始めた地域経済に水を差しかねない状況に直面している。人口減少により、労働力の確保が難しくなっているのだ。進学や就職を機に県外へ出た若者が戻らない傾向が、その大きな要因となっている。鳥取商工会議所の大谷芳徳専務理事は「企業誘致が進み、深刻な人材不足が間近に迫っている」と懸念する。


こうした状況に対し、県は、産業人材の環流を地方創生の柱に位置付け、取り組みを開始した。


技術や経験を持ったプロフェッショナル人材を県外から呼び込む「IJUターン就業助成金事業」を先行して実施。さらに、製造業など人材不足が著しい分野に就職する大学生や既卒者に、奨学金返済額の最大2分の1を助成する「未来人材育成奨学金支援事業」を8月にも始める予定だ。基金を創設し、商工会議所などからも寄付を募る。


4年間で1万人の正規雇用の創出をめざし、政策の立案、実行を急ぐ鳥取県。「地域の将来を担う若い人材を確保したい」と高橋局長は話す。県の産業政策に対し積極的に提案をしてきた、公明党の銀杏泰利県議は「今後も徹底して現場を回りながら、産業振興を図っていく」と語る。

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