eギリシャ債務危機 ユーロ離脱回避へ合意形成を

  • 2015.07.09
  • 情勢/国際

公明新聞:2015年7月9日(木)付



欧州統合の象徴であるユーロは1999年の誕生以来、最大の試練に直面している。


欧州連合(EU)は、緊急のユーロ圏首脳会議を開き、財政危機に陥ったギリシャに対する金融支援の交渉を再開するかどうか協議した。


ギリシャのチプラス首相が、新たな金融支援を求めたのに対し、EU側は支援を受けるには包括的で具体的な財政改革案が必要だとして、10日朝までに提出するようギリシャ政府に要求したという。新たな改革案が示されれば、12日の首脳会議で対応策を話し合うことを決めた。


会議後の会見で、ユンケル欧州委員長は「約束を守らなければ最悪のシナリオは避けられない」と述べ、期限内に実効性のある改革案を示すよう強く求めた。


これに対し、チプラス首相は、EUとの合意に向けた努力を続ける意向を表明、「今週末までに解決できると信じている」と述べた。


しかし、新たな改革案の提出が遅れたり、EU側が納得できる内容に程遠く、交渉が行き詰まった場合、ギリシャは国債などを償還できず、本格的な債務不履行(デフォルト)に陥る可能性が高まる。その事態は、ギリシャにとっても避けるべきであろう。


ドイツのメルケル首相は、改革案が承認されれば長期的な支援策を実施するまでの「つなぎ」となる短期融資も可能だとの認識を示しており、時間は限られているが、ギリシャは厳しい現実を直視して改革案をまとめてほしい。


既に、ギリシャの銀行は預金流出で資金がほぼ底を突きつつある。追加資金がなければ銀行の機能はマヒし、金融システムが崩壊、ユーロ圏離脱が現実味を増す。


そうなれば、ギリシャだけでなく、EUも大きな痛手を被る。国際的な基軸通貨に育ったユーロから離脱する国が出れば、EUの求心力は一気に低下し、統合の前提が揺らぐ事態と言えよう。EUの動揺は世界の政治・経済のリスクになりかねない。


債権団の一員である国際通貨基金(IMF)は、大幅な債務カットや返済期限の延長などの検討なしに課題は解決しないと認めている。双方が可能な限り歩み寄り、合意点を見つけ出すべきである。

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