e明治の産業革命遺産 保存と公開に国の支援が必要

  • 2015.07.07
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年7月7日(火)付



国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は5日、国内8県23施設からなる「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録を決めた。一昨年の富士山、昨年の富岡製糸場に続き、3年連続で国内に世界遺産が誕生することを歓迎したい。


産業革命遺産は、幕末から明治期にかけて日本の重工業が発展した歴史を示す施設であり、造船所や炭坑、製鉄所などが含まれる。西洋以外で日本が初めて産業化に成功した点などが高く評価された。


世界遺産登録の影響は大きい。富岡製糸場は、約31万人だった2013年度の来場者が14年度は約134万人に急増した。世界遺産への関心は国内外で強く、産業革命遺産にも多くの観光客が訪れると見込まれる。今後は、遺産の保存と公開を両立させていくことが重要になる。


特に、早急な対応が求められているものの一つが長崎市の軍艦島(端島炭坑)だ。地元の公明議員が積極的に世界遺産登録を後押ししてきた同島には、日本最古の鉄筋コンクリート製アパートなどが残り、独特の景観を構成しているが、炭坑閉山後は廃墟となり損傷が激しい。保存には高額の費用がかかると試算されている。


長崎市は年内にも保存方針を決める予定だが、政府は少しでも良い状態で見学者に公開できるよう、財政支援を含め積極的に後押しをすべきである。


産業革命遺産には、民間企業が今も稼働させている施設も含まれる。こうした施設は見学を想定しておらず、どこまで公開し、どのように見学者の安全を確保するかの方針決定が難しい。また、世界遺産に登録されると、補修や改築のための手続きが従来よりも煩雑になる。このため、手続きに関わる行政機関は、遺産を保有する企業に過度な負担が生じないよう適切に対応する必要がある。


今回の世界遺産委員会では、日本と韓国の間で粘り強い調整が行われ、日本の産業革命遺産、韓国の百済歴史地区の世界遺産登録が、いずれも21委員国の全会一致で決定した。


この取り組みを今後の日韓関係の改善に生かしてもらいたい。

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