e法曹養成改革 優秀な人材を法律の世界へ

  • 2015.07.06
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年7月6日(月)付



医学部で学べば大半の医学生が医師国家試験に合格するように、法科大学院で学べば70~80%の学生が司法試験に合格し、法曹と呼ばれる弁護士、裁判官、検察官になれるはずであった。


しかし、この構想が10年経っても実現していない。その結果、法曹志望者が激減している。


法に基づく紛争解決は国際標準である。各国は法曹育成を真剣に進めている。国際取引を円滑に進めるのも、「社会生活上の医師」として国民の権利を守るのも法曹だ。優秀な人材が法律の世界に魅力を感じないようでは、日本の将来に明るい展望は開けない。


政府の法曹養成制度改革推進会議は先月末、今後の改革方針を決めた。司法試験の合格者が極端に少ない法科大学院の組織見直しや、将来の法曹人口のあり方を踏まえて、毎年の合格者数を1500人程度に抑えると同時に、法曹の活動領域(職域)を拡大するなど、思い切った内容になっている。実現に向けた努力を期待したい。


なぜ、有能な人材が法曹に魅力を感じなくなったのか。それは、司法試験の合格率が低すぎるため、法曹をめざすリスクが高いからだ。


昨年の司法試験合格者数は1810人。合格率は22.6%で過去最低を更新した。2009年以降、合格率は20%台で推移している。さらに弁護士志望の場合、弁護士事務所への就職も困難な状況であり、04年の法科大学院スタート時に約7万3000人いた志願者が、昨年は約1万1000人になった。


政府は当初、毎年の合格者数を3000人と掲げながら、法科大学院を乱立状態にして入学定員をピーク時には約5800人にした。これでは70~80%の合格率はそもそも無理だ。弁護士人口の増加を見越して活動領域を広げる努力も不十分だった。また、3000人合格どころか現実は2000人合格がやっとであったため、法科大学院教育のあり方も問われている。


政府は18年までの4年間を法科大学院の集中改革期間とし、当初構想の合格率約70%をめざすとした。昨年4月の公明党の緊急提案と同じだ。この改革を最後の機会として取り組む必要がある。

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