e危険ドラッグ規制 国際的な情報共有体制の構築を

  • 2015.06.30
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年6月30日(火)付



国際条約などで規制されている麻薬や覚せい剤のような不法薬物に該当しないように作られる危険ドラッグ。


化学構造は麻薬などとほとんど変わらないため、作用は同等か、それ以上であるといわれている。吸引すれば強い幻覚や錯乱に見舞われ、意識不明となり死に至ることも少なくない。


危険ドラッグの材料となる新精神活性物質(NPS)と呼ばれる薬物の大半は、海外から入ってくるが、その輸入を取り締まる水際対策が強化され、成果を上げている。


財務省は今月、4~5月までで、指定されているNPS479件を没収、廃棄したと発表した。昨年、税関が摘発した麻薬などの不正薬物379件を上回る。従来はNPSを発見しても、税関で強制的に処分できなかったが、公明党が強力に推進した改正関税法の成立により、没収、廃棄できるようになった効果だ。


とはいえ、NPSの種類は世界中で急増しており、一国だけの対策には限界がある。


国連薬物犯罪事務所(UNODC)が26日に公表した「世界薬物報告」によると、NPSは現在、541種類あり、95カ国・地域に広まっているという(2009~14年12月まで)。


国際条約では麻薬以外にも、睡眠薬や精神安定剤など新たに乱用される薬物があった場合、規制に加えている。現在、約200種類が規制薬物となっているが、急増するNPSを網羅するのは難しい。各国で新たに発見されるNPSの情報を共有し、国際的に連携して取り締まる協力体制の構築が不可欠である。


UNODCも、NPSの規制に向けた国際協力の必要性を訴えている。しかし、特に途上国が提供するNPSのデータが不十分であり、541種類という数も氷山の一角ではないかと懸念している。まずは、UNODCに全ての国が詳細な情報を提供し、NPSに関する正確な現状を把握できるようにすべきである。


UNODCによるNPSについての分析は、主に先進国がもたらした情報に基づいており、世界全体の情勢を反映しているとはいえない。日本をはじめとする先進国が、途上国のNPSに関する調査を支援することも必要である。

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