eコラム「北斗七星」

  • 2015.06.29
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年6月27日(土)付



広島市の原爆資料館に印象深い写真パネルがある。原爆の惨状を後世に伝える展示物の一つで、本館の出口付近に掲げられている。タイトルは「焦土に咲いたカンナの花」◆撮影したのは朝日新聞の松本榮一記者(故人)。原爆投下直後の9月、爆心地から約800メートル地点の光景で、焼け野原のただなかに一叢のカンナの花が咲いている。「75年間は草木も生えない」といわれた被爆地に芽吹いた、新しい命のたくましい姿に感銘を受ける◆カンナは熱帯性の植物で花は夏の間じゅう咲き続ける。そのカンナに平和の願いを込めた「カンナ・ロード」と呼ばれる道が広島市にある。広島東洋カープの本拠地球場マツダスタジアムから市立大州小学校までの大州通り約1.5キロがそれだ◆この夏も、沿道の企業や事業所などの植栽スペースに設けられた花壇で、カンナが赤い花を輝かせている。植えたのは通学路にあたる大州小学校の児童ら。花壇には児童の名前とメッセージが掲示されている◆「カンナはね 勇気と希望を くれたんだ」「復興の 思いは強い 赤い花」「つなげよう 平和の思い 未来へと」。一つ一つのプレートを読みながらこの道を歩いていると、カンナがとても尊いものに思えてくる。ヒロシマの夏を彩る花に夾竹桃があるが、カンナの花もいいものだ。(中)

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