e新たな復興枠組み 地方創生のモデル示す気概で

  • 2015.06.25
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年6月25日(木)付



東日本大震災の復興支援が新たな段階へと移行する。政府の復興推進会議は24日、震災の「復興・創生期間」(2016~20年度)に行う復興事業の枠組みを決定した。5年間の総事業費は約6兆5000億円。復興税収が予測より増えた上振れ分などを財源に充て、増税は行わない。


枠組みの決定までには、政府と被災自治体が何度も協議を重ねた。最大の焦点は、これまで全額国が賄ってきた復興事業費の負担を被災自治体にどの程度求めるかだった。政府は当初、計300億円の負担案を示していたが、被災自治体との話し合いの結果、計220億円までに縮減することで決着した。


被災地以外の自治体との公平性を保つために一部事業の負担を求める政府と、これまで通り地元負担ゼロを主張した被災自治体が協議の末に、合意点を見いだしたことを評価したい。次の5年間に向けた"納得の枠組み"を作り上げたと言っていいだろう。


福島県の内堀雅雄知事が「県・市町村の訴えを、真摯に受け止めていただいたものと、高く評価する」とのコメントを県ホームページに出したのは象徴的だ。


ただ、これはあくまでも政府と自治体間の問題である。重要なのは、被災者一人一人が納得できる復興を進められるかどうかだ。自治体負担が足かせとなり、復興が遅れるようでは本末転倒になる。被災者が一日も早く当たり前の暮らしを取り戻すため、政府と自治体は今まで以上に連携を強めるべきだ。


一口に復興といっても、地域で課題は異なり、解決のスピードも違う。住宅再建やまちづくり事業が着実に進む地域がある一方で、原発被災地では、いまだ復旧もままならない中、復興への挑戦が続く。個別事情に応じて柔軟に支援策を講じてもらいたい。


今年3月に仙台市で開かれた第3回国連防災世界会議で採択された、新たな防災政策の指針「仙台防災枠組」は、被災前からあった問題を復興支援を通じて解決する「ビルド・バック・ベター」(より良い復興)の重要性をうたっている。政府も、自治体も、被災地から地方創生のモデルケースを示す気概で取り組んでほしい。

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