e障がい者への虐待

  • 2015.06.16
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年6月16日(火)付



言語道断の極めて卑劣な行為



相次ぎ発覚する施設職員による障がい者への虐待に、暗然として言葉がない。最大限に守られるべき障がい者に対する卑劣な行為は、断じて許されない。


山口県下関市の知的障がい者施設で、通所者に虐待を繰り返していたとして元職員が逮捕された。京都市の障がい児入所施設でも、職員による虐待の疑いが浮上し、市が特別監査に踏み切った。


下関市の事件では、1年前から市や虐待防止センターに通報があったにもかかわらず、虐待と認定しないまま、長期間事態が改善されなかったという。京都市では、複数の職員が問題を把握していたが上司への報告を怠ったり、市への通報が遅かったと指摘されている。いずれも、虐待情報に対する対応に問題があったのではないか。


公明党が法制化をリードして施行された障害者虐待防止法は、虐待に気付いた全ての人に、自治体への通報義務を課すとともに、全自治体に対応窓口の設置を義務付けている。全国の自治体や施設関係者は、通報態勢や対応方法の周知が万全か、あらためて点検してほしい。


厚生労働省によると、福祉施設などでの職員による障がい者への虐待は、2013年度の1年間に全国で263件確認され、455人が被害を受けたという。


ただ、虐待と認定されたケースは氷山の一角にすぎないと指摘する声がある。障がい者が被害に遭ったことを正確に訴えられない場合もあるだろう。家族が虐待の事実に気付いても、訴えると虐待がエスカレートしたり、施設から退所を迫られないかと考え、泣き寝入りする事例も少なくない。


重要なのは、施設職員に対する研修を積み重ね、虐待の芽を摘むことだ。逮捕された下関市の施設の元職員は「作業をしようとしなかったのでやった」と話したという。言語道断である。職員に十分な教育訓練が行き届いていれば、虐待は避けられたのではないだろうか。


自治体や福祉施設は、職員の人権意識や障がいの特性に応じた対処能力を高める研修を充実させ、安心して利用できる環境を築いてもらいたい。

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