eコラム「北斗七星」

  • 2015.06.12
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年6月12日(金)付



古代ギリシャの哲学者パルメニデスは、「あるものはある。ないものはない。」と説いた。世界の何事も変化しない、という彼の思想を端的に表現した言葉だ◆この言い回しの後半部分をスローガンにして、地域再生に取り組む町がある。島根県沖に浮かぶ島の町・海士町だ。ただ、パルメニデスの哲学とはニュアンスが真逆だ。同町は、都会のようにはモノは豊富にないが、自然の恵みや人々のつながりを実感でき、本当の豊かさを味わうために「ないものはない」と言える町づくりをめざす◆島に息づく地域資源と島外の若い人材の潜在能力を巧みに組み合わせて、新産業・新商品・新規雇用を生み出している。過去10年間で約300世帯430人余りが町に吸い寄せられるように移住、そのうち6割前後が定住した◆日本創成会議が東京圏1都3県の75歳以上の高齢者は今後10年で175万人増え、介護施設が大幅に不足する試算を発表した。消滅都市の可能性を予測した同会議の昨年の推計は、地方都市に衝撃を走らせたが、今回は大都市圏に警鐘を鳴らす◆住み慣れた地域で暮らし続けたい都市住民は多い。介護施設が不足する事態を放置するわけにはいかない。今度は都市部の自治体が、本当の豊かさを味わうために「ないものはない」と言えるまちづくりを進める番だ。(明)

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ