e感染症対策 薬剤耐性菌への備え急ぎたい

  • 2015.06.11
  • 情勢/国際

公明新聞:2015年6月11日(木)付



ドイツ・エルマウで開かれた先進7カ国(G7)首脳会議は、エボラ出血熱や熱帯地域でまん延する感染症などの対策の必要性を盛り込んだ首脳宣言を発表して閉幕した。


ヒトやモノが国境を越えて活発に往来する国際化時代にあって、感染症の危険性は年々高まっている。西アフリカではエボラ出血熱が依然として終息していない。韓国では、中東呼吸器症候群(MERS)の感染が広がり、死亡者も相次いでいる。こうした感染症が、いつ日本に流入しても不思議ではない。


感染症の拡大を早い段階で抑制するには、国際社会の協力が欠かせない。G7が結束して感染症対策を重視する姿勢を打ち出したのは当然であろう。


特に、首脳宣言では、感染症対策の一環として、抗生物質が効かない薬剤耐性菌の拡大防止策が強調された。


耐性菌は、抗生物質の不適切な使用が発生原因とされ、世界的な拡大が懸念されている。病気やけがで体力が落ちた人は、抗生物質が効かなければ命取りとなる。


日本でも、海外で治療を受けた患者から耐性菌が検出されることは珍しくなく、死亡例は、しばしば報告されている。数年前には、ある病院で耐性菌の院内感染によって、9人もの患者が亡くなった疑いが判明した。


英国の調査によれば、耐性菌の感染によって2050年までに世界で年間1000万人が死亡する恐れがあるとされている。


首脳宣言では、G7各国は耐性菌に関する行動計画を策定するとともに、G7以外の国の行動計画作りを支援することを明記した。抗生物質の適正使用を含め、実効性の高い行動計画が望まれる。


日本が貢献できる分野は多い。耐性菌への新薬は収益率が高くないため世界的に開発が停滞している。しかし、日本では昨年、耐性菌に対抗できる抗結核薬が約40年ぶりに承認された。どの薬が耐性菌に有効か調べることができる検査方法も研究・開発されており、世界の医療関係者から注目されている。


日本の優れた研究・開発体制を官民を挙げて支援し、世界規模で広がる耐性菌への備えを強化したい。

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