e平和安全法制 識者に聞く

  • 2015.06.10
  • 情勢/国際

公明新聞:2015年6月10日(水)付



安保環境変化に適切対応

拓殖大学特任教授元防衛相
森本 敏 氏



公明が貢献 バランス良い法体系に



―平和安全法制が日米同盟や東アジア情勢に与える影響は。


第1に、平時から有事に至るあらゆる事態に対し、日米間で切れ目のない同盟協力ができるようになる。第2に、宇宙やサイバー空間に至るまで協力の範囲が広がる。第3に、これらにより日米同盟をさらに強化し、抑止機能をアジア太平洋地域に及ぼすことができる。


昨年7月の閣議決定に基づき、4月には日米防衛協力の指針(ガイドライン)が18年ぶりに改定された。従来の指針は、主として朝鮮半島有事を念頭に置いた限定的な範囲と条件の下で協力するものだったが、今回の改定により、地理的な限定を外し、相当広範に協力できるようになった。これは変化の著しい安全保障環境に適切に対応する上で、非常に大きな意義を持つ。


―もし、防衛相在任中に今回の法制度が整備されていれば、どのような措置が選択肢として考えられましたか。


一つは、尖閣諸島周辺に迫ってくる中国への対応で、米国が警戒監視活動を行っている際、日本は要請に基づき米軍を支援することができた。もう一つは、今までアジアでの多国間共同演習に自衛隊が参加する場合、人道救援活動などには参加できるが、陸上・海上作戦は見学のみ。日本は多国間協力を推進しつつも、実際には訓練視察だけだった。この矛盾を解消できていれば、日本はもっと多国間安全保障協力にリーダーシップを発揮できたと思う。


―先日の衆院憲法審査会では、憲法学者が平和安全法制関連法案を「違憲」と指摘しましたが。


憲法学者の意見はどうであれ、国は領土や国民を守る義務を負う。自衛権について当初は、他国の防衛を目的とした国際法上の集団的自衛権行使を認める考えもあったようだが、これでは憲法解釈の枠を超えてしまう。


そこで、公明党が法制局などの意見を参考にして与党協議を通じて、憲法解釈の範囲に収まる「日本の自衛のための武力行使に限る」という制約を強く主張し、実現させる役割を果たした。その方針に基づき新3要件など複数の制約要因を設けることができた。公明党が与党協議などで示した制約が、平和安全法制の法体系をバランスの良いものにしたのであり、現在の法制は従来の憲法解釈の枠を超えるものではないと思う。


こうした公明党の役割は本来、野党第1党の民主党がやるべき仕事だった。健全な野党とは、ただ「反対」するだけではなく、「あるべき国の姿を示すため健全な批判者」としての役割も求められる。民主党にはそれができておらず、ある意味、公明党が与党内野党となって、その責任を果たしてきたといえよう。


―野党側は今回の法整備に反発しています。


自衛隊の活動についてリスクの「ある」「なし」を論じることは意味がない。大事なことは、リスクを減らすため、いかに効果的な措置を十分に講ずることができるかにある。そのためには行動基準を見直し、マニュアルを改定して訓練を行い、現地の情報を十分に得る手段を設け、指揮官が適切な判断をし、派遣される隊員が高度な士気の下で任務を遂行できる。これらの措置を取って、リスクを未然に防ぐことができる。野党は「リスクを減らすために、これから何をどうするのか」と質問すべきだ。


自衛隊による他国軍隊への支援活動についても、現に戦闘が行われている現場では行わないということを確保しつつ、任務を遂行する仕組みになっているのに、「米軍の戦闘に巻き込まれる」という批判を繰り返すことは、法案を十分に理解しておらず、国民の不安を煽るだけの、ためにする議論としか思えない。

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