e活火山法改正案 人材育成し避難計画作り進めよ

  • 2015.06.03
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年6月3日(水)付



鹿児島県・口永良部島(屋久島町)の新岳で爆発的な噴火災害が発生し、住民は着の身着のままで全員島外に避難した。国や自治体は全力で救援に当たっているが、帰還の見通しは立っておらず、不安を募らせる住民の思いに胸が痛む。噴火災害の恐ろしさを多くの国民がかみしめたことだろう。


折しも、火山防災の体制を強化する活火山法改正案が国会に提出され、近く審議が始まる見通しだ。日本各地の火山活動が活発化しており、備えは急務である。今国会での早期成立をめざしたい。


改正案は、噴火で被害が発生する恐れのある地域を国が「火山災害警戒地域」に指定した上で、警察や消防、火山専門家らで構成する「火山防災協議会」の設置を自治体に義務付ける。自治体は協議会の意見を踏まえ、避難計画の策定や避難訓練を実施する義務も課される。


避難計画や訓練の必要性は、今回の口永良部島の噴火でも明らかになった。過去に噴火災害を経験している島では、避難計画やハザードマップ(災害予測図)を作成し、繰り返し避難訓練を行って避難方法を確認してきた。日頃の準備が功を奏し、噴火から約7時間半で避難を終えた。


しかし、高い危機意識を持って取り組む自治体は、まだ少ない。気象庁が常時監視する47火山の周辺自治体(延べ130市町村)のうち、具体的な避難計画を作成済みの自治体は20市町村にとどまる。


小規模な自治体では、担当職員の確保が難しかったり、火山防災の専門家が足りないことが、計画の作成が遅れる主因に挙げられている。国は自治体を積極的にバックアップしつつ、専門家の育成に取り組むべきである。


一方、改正案は、ホテルやロープウエー駅などの観光施設にも避難計画の策定や訓練の実施を義務化する。


火山周辺は景勝地や温泉などの観光資源が豊かであり、大勢の観光客が訪れる。昨年9月の御嶽山(長野、岐阜県境)の噴火では、多数の観光客が犠牲となったことは記憶に新しい。


正確な情報提供や適切な避難誘導など、観光客の安全をいかに確保するか、官民を挙げた検討を望みたい。

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