e第5次復興加速化提言 細やかな「虫の目」支援の展開を

  • 2015.05.30
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年5月30日(土)付



被災地全域を大きく包んで網羅的に支援する。これが発災直後からこれまでの復旧・復興政策の基本スタンスだったとすれば、今後必要なのは地域・人ごとのニーズに応える細やかな支援策だろう。いわば、全体を俯瞰する「鳥の目」の政策から、地を這うようにして細部にまで目を配る「虫の目」政策への転換だ。


果たして29日、自民・公明両党が政府に提出した「東日本大震災 復興加速化のための第5次提言」は、そうした視点に立ったタイムリーな政策提示となった。これを機に、"目に見える復興"が一段と進むことを期待したい。


提言は、今年度末で「集中復興期間」が終わり、16年度から新たに「復興・創生期間」(20年度まで)が始まるのを踏まえ、中長期の政策の方向性を示したのが特徴だ。


まず、福島関連では、原発事故に伴う避難指示解除準備区域と居住制限区域の避難指示解除を「事故から6年後まで」とするよう、初めて目標期限を示した点が注目される。地元紙も「帰還を願う県民の思いに応えようとする与党の決意がにじむ」(福島民友)と評価している。


関連して精神的損害賠償(慰謝料)の方針転換を促しているのも注目点だ。要求通り、「解除1年後めどの打ち切り」から「18年3月までの一律支払い」となれば、既に解除された地域や、年内解除が予想される楢葉町などでも、7年分の慰謝料全額を受け取れる。「願いに応えてくれた」と、避難住民の間からは歓迎の声が上がっている。


復興・創生期間における復興事業の財源については、被災自治体の要望を真摯に受け止め、「原則、全額国費負担の継続」を明記。例外的に一部事業で自治体が負担する場合も、「負担の程度は大幅に低減すべき」と強調した。政府の誠実な対応を待ちたい。


ともあれ、震災から5年目。地域間の復興格差は顕著で、被災者が抱える課題も多様化、細分化する一方にある。その分、復興支援も個別事情に十分に配慮した柔軟な対応が欠かせない。


政府には、冒頭記した「虫の目」の視点に加え、潮の流れを読み取る「魚の目」も持って、本格復興の道を果敢に切り開いていってもらいたい。

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