e平和安全法制 佐藤(茂)氏の質問(要旨)

  • 2015.05.27
  • 政治/国会
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公明新聞:2015年5月27日(水)付



26日の衆院本会議で行われた「平和安全法制」関連法案に関する公明党の佐藤茂樹氏の質問と、安倍晋三首相の答弁の要旨を一問一答形式にまとめた。



切れ目ない法制が必要



厳しさ増す安全保障環境


佐藤茂樹氏  公明党と自民党は、国民の命と平和な暮らしを守る安全保障法制の整備について、昨年の5月から約1年にわたり、検討を行ってきた。


中でも、憲法9条の下で許容される「自衛の措置」はどこまで認められるのかを突き詰めて議論した結果、昨年7月1日の閣議決定において、厳格な歯止めとなる「新3要件」
【別掲】が明記された。その後、閣議決定を踏まえた国会での議論が積み重ねられ、本年3月、与党間で法制整備の「具体的方向性」をまとめ、その中で自衛隊の海外での活動を認める際の歯止めとして「国際法上の正当性」「国民の理解と民主的統制」「隊員の安全確保」という「3原則」が公明党の提案で盛り込まれた。


平和安全法制は、これまでの国会審議や与党間の十分な論議を経て法案提出に至ったものであり、拙速との批判は当たらない。他方、法整備の全体像を国民に理解していただくためには、法案審議を通じ、国民の不安や懸念を一つ一つ払拭していくことが大切だ。


なぜ今、法制の整備が重要なのか。わが国を取り巻く安全保障環境がどのように変化し、法制上の措置が必要になったのか。


安倍晋三首相
わが国を取り巻く安全保障環境は、ますます厳しさを増している。具体的には、アジア太平洋地域、およびグローバルなパワーバランスの変化。日本の大半を射程に入れる数百発もの北朝鮮の弾道ミサイルの配備および核兵器の開発。邦人が犠牲になった、国際テロの脅威といった問題が挙げられている。


脅威は容易に国境を越えてやってくる。もはやどの国にも、一国のみで平和を守ることはできない事態になっている。


このように、わが国を取り巻く安全保障環境が根本的に変容する中で、平和な暮らしを守り抜くためには、あらゆる事態を想定し、切れ目のない備えを行う平和安全法制の整備が必要不可欠だ。



外交努力で紛争の未然防止を



佐藤 平和と安全を守るために、まず大切なのは、紛争を未然に防止する外交努力だ。政権発足以来、どのような外交・対話努力を重ねてきたのか。

首相 わが国の平和と安全を確保するために、私は近隣諸国との対話を通じた外交努力を重視している。外交を通じて平和を守る。今後も積極的な平和外交を展開していく。



受動的防衛戦略が基本



佐藤 憲法9条の下、わが国は専守防衛に徹し、他国に脅威を与える軍事大国とはならないという基本方針を堅持してきた。今般の法整備によって、「専守防衛」の定義と基本方針が変わることになるのか。


首相
わが国は戦後一貫して、日本国憲法の下、専守防衛に徹し、平和国家として歩んできた。今般の平和安全法制の整備に当たっては、1972年に示された政府見解の基本的な論理は一切変更していない。憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略である専守防衛については、その定義、そしてわが国防衛の基本方針であることにいささかも変更はない。



新3要件は厳格な基準



内閣の恣意的解釈できず


佐藤 憲法9条の下で許容される「自衛の措置」は、「新3要件」に該当する場合にのみ認められる。今般の武力攻撃事態対処法改正案においても、「存立危機事態」が新たに定義され、新3要件のすべてが明記された。新3要件に該当した場合に可能となる「武力の行使」は、他国防衛そのものを目的とする全面的な集団的自衛権の行使が含まれるのか。また、新3要件に該当するか否かの判断にあたり、時の政府が恣意的に運用できるような解釈の余地が残されているのか。


首相
新3要件の下、わが国が用い得る武力の行使については、あくまでわが国の存立を全うし国民の平和な暮らしを守るため、すなわちわが国を防衛するためやむを得ない「自衛の措置」として認められるものであって、国連憲章51条で認められている集団的自衛権の行使一般を認めるものではなく、また他国の防衛それ自体を目的とする集団的自衛権の行使を認めるものではない。


わが国が武力の行使を行い得るのは新3要件を満たす場合に限られるが、これは憲法上の明確かつ、厳格な歯止めになっている。国際的に見ても他に例のない極めて厳しい基準であって、その時々の内閣が恣意的に解釈できるようなものではない。


さらに実際の武力の行使を行うために、自衛隊に防衛出動を命ずるに際してはこれまで同様、原則として事前の国会承認を求めることが法律上、明記されており、政府が判断するのみならず、国会の判断をいただき、民主主義国家として慎重の上にも慎重を期して判断されることになる。



後方支援は武力行使に当たらず



佐藤 法整備によって可能となる後方支援は、一つは「わが国の平和と安全のために行う支援」、もう一つは「国際社会の平和と安全のために行う支援」に分かれる。前者は、重要影響事態安全確保法、後者は新たな国際平和支援法として、法律上措置するが、二つの後方支援を法律上立て分けた理由は何か。


二つの法律に基づき実施される後方支援は、憲法が禁ずる「武力の行使」に当たるのか、また、武力の行使に発展する可能性はあるのか。他国の武力行使との一体化を防ぐために、どのような歯止めが規定されているのか。


首相 二つの法律は対応措置の内容について大きな差異はないが、このように対象となる事態、法律の目的が異なるものであり、対応措置を実施するための要件や手続きも異なることから、その趣旨を明らかにするため、二つの法律に分けることは適切であると判断した。


一方、この二つの法律によって、わが国が実施する補給、輸送などの支援活動それ自体は、武力の行使に当たるものではない。また、他国の武力の行使と一体化することにより、わが国自身が、憲法上認められない武力の行使を行ったとの法的評価を受けることがないよう、支援対象となる他国軍隊により現に戦闘行為が行われている現場では支援活動は実施しない。


また、仮に状況変化により、現に戦闘行為が行われている現場などとなる場合には、直ちに活動の一時休止、中断等を行うことを明確に規定している。武器を使って反撃しながら支援活動を継続することはない。



重要影響事態

日本の平和と安全のために支援



佐藤 重要影響事態安全確保法案では、(現行法の)目的規定から「わが国周辺地域における」という文言を削除し、「そのまま放置すればわが国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態」という文言を維持し、その名称を新たに「重要影響事態」に改めた。また後方支援の対象として、これまでの米軍に加え、「その他の国際連合憲章の目的の達成に寄与する活動を行う外国の軍隊」も追加されている。


実質的な地理的制約をなくし、支援対象を拡大することで、「自衛隊の活動がグローバルに拡大するのではないか」との懸念が論議されているが、なぜ、こうした見直しが必要なのか。


首相 グローバルなパワーバランスの変化、技術革新の急速な進展、大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発および拡散、国際テロなどの脅威という安全保障環境の変化を踏まえると、わが国の平和および安全に重要な影響を与える事態が発生する地域をあらかじめ特定することは困難であるため、対象とする事態を重要影響事態に改め、わが国周辺の地域におけるといった文言を用いないこととした。


また、わが国の平和および安全に重要な影響を与える事態に対処する上で、日米安保条約の目的達成に寄与する活動を行っている米軍だけでなく、国連憲章の目的の達成に寄与する活動を行っている外国軍隊等との連携をも強化することが、わが国の平和および安全を確保するためには不可欠であると考えている。


重要影響事態に対処する外国との連携においても、日米安保条約の効果的な運用に寄与することが引き続き中核であるとの認識であり、またわが国の平和および安全の確保に資するという法律の目的は変わらない。



一般法で積極的な貢献



例外なき「国会の事前承認」明記


佐藤 国際平和支援法については、特措法ではなく一般法とすることで、「政府の判断でいつでも自衛隊の派遣が可能となり、歯止めが効かなくなるのではないか」といった懸念がある。公明党の主張により、例外なき国会の事前承認をはじめとする、より厳しい要件や手続きが課せられることとなったが、なぜ「特措法」ではなく「一般法」が必要なのか。


首相 将来、具体的な必要性が発生してから改めて立法措置を行うよりも、自衛隊の活動根拠をあらかじめ定めておく方が、平素より各国とも連携した情報収集、教育訓練が可能となり、その成果を基本的な体制整備に反映することができること、また、常に派遣のための法的根拠が存在しているため、活動内容、派遣規模といったニーズを確定するための現地調査や各国との調整を迅速に実施できること、これにより、わが国として国際社会の平和および安全に主体的かつ積極的に寄与していくとの意思を目に見える形で表明するとともに、実際の支援活動も、より迅速に行うことが可能となり、特措法で対応する時よりも効果的になることにより、特措法ではなく一般法が必要と判断した。


国会の関与については、この法律が国際の平和および安全に寄与する目的で自衛隊を海外に派遣するための一般法であることに鑑み、国民の理解を十分に得つつ、民主的統制を確保する観点から、例外なく国会の事前承認を必要としている。



PKO

武器使用権限はこれまで通り



佐藤 国連平和維持活動(PKO)について、新たな業務として安全確保業務が追加され、これに伴い任務遂行型の武器使用が認められることとなるが、安全確保業務には、現地の警察が行うような治安維持活動一般も含まれるのか。


新たな活動として国連が統括しない人道復興支援などを行う「国際連携平和安全活動」に、なぜ、参加する必要があるのか。新たな活動においても、従来の「参加5原則」は維持されるのか。


首相 PKOにおけるいわゆる安全確保業務は、防護を必要とする住民、被災民その他の者の生命、身体および財産に対する危害の防止、特定の区域の保安のための監視、駐留、巡回、検問および警備を行うものだ。これは派遣先国の同意等が安定的に維持されることを前提に、あくまでも派遣先国の警察権の補完や代行という意味での事実行為として行うもの。犯罪の捜査や犯人の逮捕といった、派遣先国の警察権そのものを執行するような内容の業務は含まれない。


また、この業務に伴う武器使用権限においては、危害許容要件、すなわち相手を傷つけることが許されるのは、正当防衛または緊急避難に限られ、これまでと変更はない。


国際連携平和安全活動とは、国連の統括しない枠組みの下で、国際の平和および安全を維持するために行われる活動であり、停戦合意や受け入れ同意を含む国連PKOについて必要とされている参加5原則と同様の厳格な原則に該当する場合に参加できることとしている。

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