e介護・保育・障がい者 一体型施設の利便性を高めよ

  • 2015.05.25
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年5月23日(土)付



厚生労働省の検討チームで、高齢者介護や保育、障がい者福祉のサービスを一体的に提供する「共生型福祉施設」の支援策などが議論されている。今月中にも具体策がまとめられる予定である。


共生型福祉施設は、高齢者や子ども、障がい者らが一緒に利用できる施設だ。地域によって名称や運営形態はさまざまだが、他世代との交流を通じて高齢者が生き生きと過ごしたり、子どもの思いやりの心がはぐくまれる効果が期待できる。障がい者も、社会参加の意欲が高まると指摘されている。


高齢化と人口減少が著しく進む地域では、高齢者や障がい者、子ども向けの福祉施設を単独で設けるには、予算面で限界があり、専門スタッフの確保も難しい。それに対して、共生型福祉施設は1カ所で複数の福祉サービスを効率的に提供でき、利点が多い。


現在、全国に少なくとも1000施設以上あるとされる共生型福祉施設が普及する余地は十分にある。


ただし、課題がないわけではない。


介護、保育、障がい者福祉の各分野ごとに、法律や施設に関する規制、補助金の仕組みなどが異なっている。そのため、行政のタテ割り的な対応で、共生型の強みが発揮できないケースも少なくない。


例えば、ある県の共生型福祉施設では、自治体の判断によって高齢者の送迎車に障がい者の同乗が認められなかったという。また、施設が高齢者や障がい者向けのサービスに加え、小学生の居場所づくりとして放課後児童クラブの運営を計画したところ、行政との折衝の中で、独立した部屋をそれぞれ設置するよう求められ、諦めた例もある。


利用者の安全とサービスの質を確保するのは当然であるが、支障のない範囲で利便性を高めるための柔軟な運用はできないのだろうか。


一方、高齢者ケアや保育など各分野で求められる専門的な知識や技術は違う。スタッフが幅広く適切に対応できるよう横断的な内容の研修会を開いている自治体もある。人材養成の参考としたい。


厚労省の検討チームは、普及への課題を洗い出し、利用者の立場に立った支援策を探ってほしい。

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