eコラム「北斗七星」

  • 2015.05.20
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年5月20日(水)付



広島市は4月から、原爆被害者の体験を語り継ぐ「被爆体験伝承者」による講話会を開いている。約3年にわたって市が養成した伝承者(1期生50人)が、高齢化する被爆者に代わって、原爆の惨禍を伝え、核廃絶への思いを訴えるものだ◆講話会で伝承者の話を聞いたが、被爆者から伝授された証言は、被爆者本人が語っていると思うほど真に迫っていた。被爆者の怒りが、悲しみが、平和への願いが、大切に保存されているような気がして胸が熱くなった◆米ニューヨークの国連本部で開かれている、5年に1度の核拡散防止条約(NPT)再検討会議は、22日の最終日に向けて大詰めを迎えている。NPTは、米、英、仏、ロ、中の5カ国に核兵器の保有を認め、それ以外の加盟国の保有を禁止する核不拡散体制。実に不平等なものではあるが、保有5カ国に核軍縮義務を課す唯一の国際的枠組みである◆今回の再検討会議は、核兵器の非人道性に焦点を当て核兵器禁止条約など法的枠組みの検討を促す非核保有国と、その動きを警戒する核保有国が激しく対立しており、最終文書に合意できるかどうか、全く見通せない状況だ◆「被爆70年」の今年、被爆者の平均年齢は80歳を超す。高齢の被爆者が、「核兵器のない世界」へ前進していると感じられるような合意に至ることを願ってやまない。(中)

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