e復興事業の新方針 国・自治体一体の取り組みこそ

  • 2015.05.14
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年5月14日(木)付



復興は道半ばにして、むしろこれからが正念場だ。国・地元自治体一体の取り組みがいよいよ重要になっていることを肝に銘じてほしい。


今年度末で終了する東日本大震災の「集中復興期間」(2011年度~)の後を継ぐ新たな復興事業の基本方針が復興庁から発表された。


16年度からの向こう5年間を「復興・創生期間」と位置付け、この間に必要な復興予算を6兆円と見込む一方、費用の一部負担を地元に求めている。全額国費で賄ってきたこれまでの被災地支援が新たな段階に入りつつあることを伺わせる内容だ。


集中復興期間中、政府は所得税などを増税し、総額26兆3000億円の復興予算を計上して支援してきた。これを新方針では、「復興のために真に必要な事業」を選別し、全額国費負担のものと、自治体に一部負担を求めるものとに仕分けするとしている。


具体的には、高台移転や復興住宅の建設、心のケアなどの基幹事業や、原発事故に伴う除染、風評対策、第1原発周辺の12市町村に関わる事業などは、引き続き全額国費で賄う方針。一方、内陸部の道路整備などは、緊急性が低く、全国共通の課題でもあるとして、一部を自治体に負担してもらう。ただし、その場合も、他地域より負担割合を軽減し、実際の地方負担を数百億円程度に抑える考えだ。


とはいえ、地元負担ゼロの「集中復興期間の延長」を求めてきた被災3県の反発は強い。今なお避難生活者が22万人、仮設住宅入居者が8万人もいる現状を思えば、当然であろう。地域・個人間で広がる復興格差にも目を配る柔軟な対応が政府に求められる。


一方、自治体側も、これを機に過去の事業をあらためて精査してはどうか。住民の間で意見が分かれる巨大防潮堤の是非など、見直しが必要と思われる事業は少なくない。


重要なことは、「復興とは全ての被災者が一日も早く普通の暮らしを取り戻す『人間の復興』にある」(井上幹事長)との視点だ。今回の方針決定を受け、政府と被災自治体との話し合いが向こう1カ月にわたって続くが、双方ともに被災者目線に徹し、次の5年に向けた"納得の枠組み"を導き出してほしい。

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