e"ひと"が主役の地域社会へ

  • 2015.03.02
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年3月1日(日)付




公明が推進する地方創生・重点5分野



「ひと」が主役の地域社会へ――。いよいよ各地で地方創生への取り組みが本格的にスタートします。各自治体は2015年度中に、独自の政策と数値目標を盛り込んだ地方版総合戦略を策定することになっています。公明党は、地方創生を担う「ひと」に視点を置き、(1)地域しごと支援(2)都市と農村の交流(3)奨学金を活用した大学生らの地方定着の促進(4)「日本版ネウボラ」の推進(5)生活・福祉サービス施設を集約化した「小さな拠点」形成――の5分野に重点的に取り組んでいきます。それぞれの先行事例とともに紹介します。



地域しごと支援



県外人材を呼び込む 島根県



島根県は、出身地に戻るUターン者や、都市部などからのIターン者への支援に力を入れてきました。県しまね暮らし推進課によると、UIターン者は右肩上がりで増加し、13年度は575人。「仕事や住まい、生活の情報提供やさまざまな支援策を通じて定住につなげている」と、県担当者は手応えを語っています。


県や民間の出資で1992年に設立された「ふるさと島根定住財団」が行政と連携し、UIターン総合サイト「くらしまねっと」での定住情報の発信や、定住アドバイザーによる相談を実施。東京、大阪、広島に相談窓口を設置し、「UIターンフェア」の開催やインターンシップ(職業体験)を呼び掛けてきました。


定住を果たすために重要な就職支援については、例えば就農希望者へは、1年以内の産業体験や、研修、就農開始時に県独自の支援が受けられます。さらに、農業と、介護や地元企業との兼業を「半農半X」と呼び、地域に合った働き方を提案するユニークな取り組みも推進しています。



国は、地方への新しいひとの流れをつくるため、「地域しごと支援事業」で、地域が必要とする人材を大都市圏で掘り起こすとともに、各自治体による一元的な情報提供や、人材育成、定着を促す取り組みを進める方針です。



都市と農村の交流



観光客向け宿泊体験 福島・喜多方市



福島県喜多方市は、春から秋にかけて観光客に農家へ泊まって、その土地ならではの暮らしを体験してもらうグリーン・ツーリズムに力を入れてきました。


同市の売りは、(1)サポートセンターを開設し、観光客向けの情報提供や仲介を一元的に行っている(2)田植え・稲刈り、野菜作りのほか、そば打ち、竹細工、化石発掘体験などの豊富な体験メニューをそろえている――など。市を挙げて受け入れ体制を整え、現在は農家150軒が体験メニューを提供し、同41軒に泊まれるようになっています。


年間約1万5000人にまで増えたグリーン・ツーリズムによる観光客が、東日本大震災直後の11年度には約6000人にまで落ち込みました。特に、約9000人が訪れていた小中学生は、1000人を切るまでに。市は、風評によって遠のいた客足を取り戻そうと、首都圏を中心に約300校に出向き、PRなどを重ねているといいます。


同市の担当者は「当市では、グリーン・ツーリズムが地方創生の重要な柱になり得る。若い女性や外国人らをターゲットにした新たな施策にも乗り出したい」と語っていました。



政府は、都市と農村との人の交流を活発化させることにより、一時滞在から継続的な滞在、移住・定住の流れを生み出す狙いです。



大学生の定着促進



奨学金の返還を減免 香川県



香川県は12年度から、大学生、専門学校生など向けに奨学金の返還を一部免除する「香川県大学生等奨学金」制度を始めています。県内企業で3年間働くことなどが減免の条件です。


同奨学金では、最大72万円の返還を免除。「制度が始まったばかりで返還を免除された人はいないが、返還免除を申請する人が出始め、学生が地元回帰する機運を感じている」(県の担当者)と好評です。14年度までに累計382人が同奨学金を利用しています。


香川大学4年の岡田紘明さんは「4月から大学院へ進学し、将来は県内で消防士に就きたいと考えている。奨学金の返済が一部免除される制度はありがたい。機会があれば利用してみたい」と話していました。



同県のように学生の地方定着を図るため、自治体や地元産業界などが地方就職する学生の奨学金返還を支援する制度が広がりつつあります。



「小さな拠点」形成



多世代が地域で交流 富山県



人口減少が進む中、年齢や障がいの有無に関係なく、誰もが住み慣れた地域で暮らせるよう、福祉サービスを提供する「共生型福祉施設」の普及が求められています。先進事例として注目されているのが富山県が取り組む「富山型デイサービス」です。


主に民家などを改修した小規模施設で実施。従来の"縦割り"の福祉サービスと異なり、利用者を限定しないため、高齢者や障がい者、子どもたちが家族的な雰囲気の中で共に過ごすことができます。(1)高齢者の日常生活が改善する(2)障がい者の自立につながる(3)子どもたちに思いやりの心が育まれる――などの"共生効果"が生まれています。


1993年、民間主導で始まりました。その後、国の特区指定や施設整備に対する補助金など行政が支援を実施。同県での成果を受け、全国で実施できるようになりました。県としても事業所数を105カ所(2013年度末現在)から、21年度までに全小学校区(200カ所)への拡大をめざしています。



こうした多世代が交流できる施設の整備は、中山間地域などにおける「小さな拠点」づくりの一環として、国も推進する方針です。



日本版ネウボラ



切れ目ない子育て支援 東京・文京区



東京都文京区は、フィンランドの母子支援制度をモデルにした「文京区版ネウボラ事業」を15年度からスタートさせます。妊娠・出産期から育児期までの子育て支援策を充実させ、総合的な相談や支援体制をワンストップ(1カ所)で対応するものです。


同事業では、区内に2カ所ある保健サービスセンターに母子保健コーディネーター(保健師)を配備。妊産婦や家族のニーズを踏まえ、医療機関などの関係機関と連携して必要な情報やサービスを提供します。


すでに行っている妊婦体験や育児実習ができる両親学級、産後セルフケア教室の実施回数を拡充。もく浴・母乳指導を行う母乳相談事業などを始めます。


1歳7カ月の子どもがいる同区の堤尚絵さんは「インターネットで子育て情報を入手することが多いが、どの情報が正確なのか分からない時もある。そうした時に、1カ所で相談に乗ってくれる体制は心強い」と語っていました。



同事業のように、親子を一貫してサポートするワンストップ拠点「子育て世代包括支援センター」が、15年度に全国150市町村で整備される予定です。

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