e道徳の教科化の課題

  • 2015.02.25
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年2月25日(水)付




心の"評価"は、なじまず

体験学習や良書の活用を



<問い>



小・中学校における道徳が「特別の教科」になると報じられています。公明党の考えを教えてください。(東京 M・Y)



党文部科学部会長 浮島 智子 衆院議員



昨年10月、中央教育審議会(中教審、文部科学相の諮問機関)は、義務教育で教科外活動として位置付けている「道徳」について、学校全体で取り組み、数値評価しない「特別の教科」として扱うことを答申しました。


公明党は、子どもの豊かな心を育てるための道徳教育の重要性を踏まえた上で、道徳教育が特定の思想や価値観の押し付けにならないよう一貫して訴えています。


文科省は中教審の答申を受けて、文章による評価も含めて検討を進めていますが、これまでの党内議論では評価については慎重な対応を求める意見が出ています。


道徳は他教科のように、試験で客観的な理解度を測ることはできませんが、評価することになった場合、進学や就職時の選考資料となる調査書(内申書)に文章でも記載されることになります。これは児童・生徒の心の管理につながる危険性があると考えています。例えば、少しでも良い評価をもらおうと、教員や教科書に合わせようとする児童・生徒が出る可能性があります。


また、道徳の教員免許はない上、大学の教職課程における道徳の必修単位は2単位にすぎません。必ずしも十分とは言えない教員養成制度の下での評価は教員に大きな負担になります。一方、国際調査でも多忙とされている日本の教育現場で児童・生徒と向き合う時間をどう確保するかや、軽度発達障がいなどがある児童・生徒の評価をどうするかなどの課題も残ったままです。実質的に道徳の評価はなじまないと考えます。


文科省は現在、2018年度以降の道徳の学習指導要領案を公表し、パブリックコメント(国民からの意見)を受け付けています。指導要領は各出版社が教科書をつくる時の基準になります。特定の思想や考え方を押し付ける内容であってはいけません。


06年12月施行の改正教育基本法では、公明党の強い主張により愛国心をめぐる表記については、教育の目標の一つとして「我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」と盛り込み、「国家」というよりも「郷土」といった意味合いの強い表現とし、国家主義の懸念を払しょくしました。今回の道徳の指導要領は、改正教育基本法にのっとった表現を使用すべきだと考えています。



いじめには地域挙げて対応



公明党はかねてから、子どもの豊かな心を育むために、体験学習や良書を活用した教育の重要性を指摘してきました。また、いじめの対応では学校運営に地域住民らが参加することで教育の安定性を高め、子どもの個性に応じた教育を進めることも訴えてきました。児童・生徒の心の中を管理するのではなく、人を慈しむ思いやりの心など内面を引き出す教育こそが、道徳教育においては大切です。

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