eコラム「北斗七星」

  • 2015.02.19
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年2月19日(木)付




私たちの周りには、家族や職場の同僚など毎日接する人もいれば、時おり会って談笑の時間を楽しむ友人・知人もいる。親しい仲ではなくても、ご近所の人とも会えば挨拶や会話を交わす◆フランスの思想家トクヴィルを研究している東京大学の宇野重規教授は、ご近所の人たちをグレーゾーンと呼ぶ。完全な他人ではないが、家族や同僚ほど親密ではないからだ。「これからどうする―未来のつくり方」(岩波書店)にある◆グレーゾーンで、どれだけ「私たち」といえる関係を増やせるか。身の回りの問題を「私たち」自身で解決する関係が築けるか。民主主義とは「私たち」の数と密度によって、内実が決まると宇野氏は考える。トクヴィルが、自分たちの課題を自分たちで処理していかない限り、およそ民主主義は砂上の楼閣であると説いたことと重なる◆ただ、都市部では日中、お互いに家を留守にしがちだ。コミュニティー意識が芽生えにくいのも事実だが、全て行政任せの姿勢では民主主義社会の一員として、冷ややかな目を向けられても仕方ない◆どうすれば、自宅の周辺がもっと住みやすくなるか。何が足りないのか。ご近所同士の話し合いが増えれば、いつの間にか地域の課題に目が向くのは間違いない。民主主義の成熟度は「私たち」で決まってくる。(明)

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